ブンデスリーガ蹴球白書BACK NUMBER
「今シーズンは、マジ残りたいから」
最終節に残留かかる清武弘嗣の叫び。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byBongarts/Getty Images
posted2015/05/23 10:00
最近ではブンデスリーガでのPKの名手ベスト10にも選ばれた清武。チームメイトからも地元ファンからも高い評価を受けるなかで、奮闘し続けている。
昨季、最終節「だけ」に出られなかった清武の苦悩。
昨シーズン、ニュルンベルクで2部降格を経験した清武は、降格したという事実の他にもう一つ悔しさを味わった。最終節の前まで33試合全てに出場していながら、最終節では試合に出る機会を与えられなかったのだ。奥寺康彦氏から始まった日本人ブンデスリーガーの歴史のなかで、全34試合に出場したのは奥寺氏しかいない。これまで多くの選手が出場停止や、怪我のために全試合出場は果たせなかった。昨シーズンの最終節を前に清武は、奥寺氏の記録に並ぶ資格を唯一得た日本人だったのだが、それも果たせなかった。
何より、チームの1部残留をかけた最後の試合でピッチに立てない悔しさとむなしさはどれほどのものだったか。
清武は当時をこう振り返る。
「昨シーズンは自分が最後に出なかったりして、『なんでオレは出られんのやろう?』か思いました。そういう意味では、あのときは自分のことを優先していましたけど、今シーズンはマジ残りたいから。たとえオレが出なくても、残って欲しいという気持ちの方が強い。ハノーファーは良いチームだし、落ちるチームじゃないし。そして自分も去年みたいな思いはしたくない」
「自分も決めて、勝って終わりたいですね」
怪我などのアクシデントがなければ清武は試合で起用されるのは間違いない。しかし、彼は昨年の悔しさも背負っているのだ。最終節を前にこう話す。
「やっぱり、あと1点は欲しいですね。自分も決めて、勝って終わりたいですね、チームのために」
アウクスブルク戦で退場してしまった親友の酒井のことも、もちろん考えている。
「あいつだってショックは受けていましたけど、『とりあえずこの1週間は飯食べないでもいいから祈ってくれ!』って言いました。オレたちが勝つためには、そういうことも大事なんです。オレらは残りますよ。残れる、残留は出来ます、絶対」
自分の想いも、チームメイトの想いも、そしてハノーファーというクラブの想いも背負って清武は最後の戦いを迎えるのだ。
フライブルクとの最終戦が行なわれるのは5月23日。ちょうど5年前に長谷部誠がヴォルフスブルクで初優勝を飾った日でもある。
ハセさんみたいになりたい。そう願う清武に、5月23日の試合は吉報を届けてくれるのだろか。