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村田諒太がメイウェザーに会った日。
2014年の5月1日、2015年の5月1日。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byAFLO
posted2015/05/12 10:50
踏み込んでの右一発でアタイデを仕留めた村田諒太。「少し汚いことをしても勝ちたいタイプ」と本人が語る、倒しに行くスタイルでラスベガスに殴り込みをかける。
手に入れた、ラスベガスに殴りこみをかける名刺。
時間があれば'90年代に活躍した伝説のハードパンチャー、元WBC、WBO世界ミドル級王者ジェラルド・マクラレンの映像を繰り返し見ていた。
「(マクラレンは)左のボディーを返せる姿勢で体を残してるんですよね。たとえ右が流れたとしても次につなげられればいいわけですから。僕は、右が強くなっている分、右に頼り過ぎてしまって体が開いてしまうところがある。かと言って打ち込みをなくしたくはない。バランスを崩したら意味ないけど、強く打ち込めなかったからそれもまた意味ないんでね」
アタイデに見舞った一発は、体を開くことなくコンパクトに強く打ち込んだもの。取り組んできた成果が実を結び、3試合ぶりのKO勝利を村田にもたらしたのだった。そして村田自身、こだわりの右が世界と戦うための「武器」となる手応えをつかめて、ラスベガスに殴り込みをかけるだけの名刺を手に入れた。ゴールドメダリストの肩書きに加えて、右の破壊力という大きなセールスポイントを刻印して。
村田のミドル級は、次代のスターを生む階級。
村田が勝利を飾った翌日、ラスベガスではメイウェザーとマニー・パッキャオのスーパースター対決が行なわれていた。両者のファイトマネーが300億円以上ともいわれる全世界注目の一戦は、玄人好みのハイレベルな攻防の末にメイウェザーが判定勝ちしている。しかしダウンシーンの一度もない戦いに、世界中のファンが心の底から興奮できたのかどうかは分からない。村田自体、興奮したとも思えない。
メイウェザー38歳、パッキャオ36歳。時代をつくったスーパースターにも引退の時期は刻一刻と迫っており、時代は次のスター探しに入っている。なかでもミドル級は、やはりホットな階級である。WBAスーパー王者ゲンナディ・ゴロフキンを筆頭に、ミゲール・コット、アンディ・リー、ピーター・クイリンら多士済々の強者がしのぎを削っている。そこにトップランク社と契約を結ぶ村田が割って入ってくる構図となれば、生き残った者が次代を担うスターに躍り出る可能性だってある。