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村田諒太がメイウェザーに会った日。
2014年の5月1日、2015年の5月1日。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byAFLO
posted2015/05/12 10:50
踏み込んでの右一発でアタイデを仕留めた村田諒太。「少し汚いことをしても勝ちたいタイプ」と本人が語る、倒しに行くスタイルでラスベガスに殴り込みをかける。
プロモーション会社から反対された対戦相手。
1年後の5月1日、村田は大田区総合体育館でプロ第7戦を戦っていた。
相手はWBO15位にランクされるブラジルのダグラス・ダミアノ・アタイデ。15戦のキャリアで黒星は世界タイトルに挑戦経験のある選手に喫した反則負けのみで、パンチ力にこそ欠けるものの、スピードとテクニックに長けた24歳が簡単な相手でないことは一目瞭然だった。契約するプロモーション会社のトップランクからは「戦うには早い相手」と反対されたという。実際、試合でもうるさい手数に村田は手を焼いている印象を受けた。4ラウンドまでは、だが。
5ラウンド、村田の顔つきが変わっていた。
「アッパーの距離じゃなく、ワンツーの距離で打て」
そんなセコンドの指示を背に、距離を取ってからのワンツーで右ストレートを相手のアゴに突き刺してダウンを奪った。
鳥肌が立つほどの凄まじい切れ味だった。
何とか立ち上がったアタイデに襲い掛かり、難なくTKO勝利を収めた。最初の一発で、試合はもはや決していた。
たかが15位ということなかれ。アタイデだって、浮上していける最大のチャンスなのだ。ゴールドメダリストでランク上位の村田に勝てば、一気に注目を集められる。そのサバイバルマッチのなかで、層の厚いミドル級のランカーを右でブッ倒した意義は計り知れない。
4ラウンドまでに見えた課題なんてもはやどうでもいいとさえ思えた。倒すことにこだわった試合で、倒し切ったのだから。
「決め手になるパンチがないと、世界で戦えない」
1年前、ラスベガスの合宿先で彼は言っていた。
「決め手になるパンチを持っておかないと、世界で戦っていけないと思う。怖いなって相手に思わせることができると、(戦い方も)違ってくるんで。今は右を打ち込む練習をずっとやってきていて、スパーをやっても、相手が打ち込んでくるの嫌だなって顔をするのが分かってくるようになりました」