セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
レアルが困惑した「予想外の展開」。
ユーベは王者に何を仕掛けたのか。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2015/05/08 10:50
セリエAでの優勝を既に決め、CLに全力を注ぐユベントスがホームでレアル・マドリーを退けた。リーグで得点王を走り、CLでも7ゴールを決めている絶好調のテベスがこの日も大仕事をやってのけた。
レアル優勢が予想されたが、がっぷり四つの好ゲーム。
このレベルでは、わずかなミスが即失点に繋がる。
27分、レアルのMFハメスはユーベの左SBエブラのマークが緩んだのを見逃さなかった。一瞬の隙を突いてPA内へ侵入すると、相手MFビダルをかわしながら浮き球のアシストを送った。これをゴール前中央へ走り込んだC・ロナウドがヘディングで押し込み、レアルは同点に追いついた。
41分には、MFハメスのダイビングヘッドが、ユーベ・ゴールのクロスバーを叩く。
“老貴婦人”と“白い巨人”による12年ぶりのセミファイナルは、互いががっちり四つに組み合う、拮抗した好ゲームだった。
これは、劣勢を予想されたユーベの指揮官アッレグリによる大胆な戦術アプローチの成果だった。
アッレグリが読みきったアンチェロッティの布陣。
中盤の要MFモドリッチとFWベンゼマを故障で欠く敵将アンチェロッティが、復帰したFWベイルをC・ロナウドと2トップで組ませる4-4-2を敷いてくるであろう、とアッレグリは予測していた。
さらに、モドリッチの代役として2日のセビージャ戦で試したDFセルヒオ・ラモスをそのまま起用する、と読んだアッレグリは「ここ数日の練習でよく走れている」と判断した22歳のMFストゥラーロをラモスのマーカー役に抜擢し、CLで初先発させる決断を下した。彼のサプライズ起用こそ、レアルから中盤のコントロールを奪うアッレグリの秘策だった。
スペイン代表の主力であり、A・マドリーとの昨年大会決勝戦で劇的な同点弾を決めたラモスに比べ、ストゥラーロの国際的知名度はゼロに等しい。
だがストゥラーロは、不慣れなポジションに喘ぐセルヒオ・ラモスのプレーを潰す仕事を実直にこなした。無名の一兵卒の働きによって、銀河系の4番は中盤の泣き所と化した。失点以降も中盤をコントロールし続けたユーベは、攻守の素早い切り替えを徹底し、隙あらば勝ち越しゴールの好機を窺った。
バルセロナでもバイエルンでもない相手から抑え込まれる予想外の展開に、レアルに焦りと怖れが生じた。