セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
レアルが困惑した「予想外の展開」。
ユーベは王者に何を仕掛けたのか。
posted2015/05/08 10:50
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
AFLO
「勇気を持った者が勝利をつかみ、恐れをなした者は敗れる。それが、チャンピオンズリーグだ」
ユベントスとの準決勝1stレグの前夜、レアル・マドリーの指揮官アンチェロッティは、昨年の大会を含め、欧州を3度制した自身の経験則を口にした。
連覇を目指す銀河系軍団の優位は大きく、迎え撃ったユベントスも、12年ぶりに挑む準決勝の舞台に委縮してもおかしくはなかった。
だが、ユーベは大一番の初戦に王者レアルを上回る気迫と万全の策で臨んだ。臆するどころか、銀河系軍団を呑みこんだのだ。
セミファイナル特有のヒリヒリした緊張感の中で、ユベントスFWモラタが開始8分に先制点を奪う。
FWテベスの強烈なシュートをGKカシージャスが前に弾き、モラタが左足で押し込んだ瞬間、超満員のユベントス・スタジアムは歓喜で爆発した。
満足なプレー機会を与えられず、昨夏レアルから放出された若武者モラタにとって、この準決勝は古巣を見返す絶好の機会だ。彼の気合いの入り方は尋常ではなかった。
ロナウドをたじろがせたDFの目つき。
ユーベの守備陣も気を吐いた。
失点の危険が高い得点直後の10分、自陣右サイドの最深部へC・ロナウドがドリブルで侵入すると、DFリヒトシュタイナーとMFマルキージオの2人がすかさず間合いを詰め、マークについた。“CR7”は2度フェイクを入れて抜きにかかったが、腰を落とし鬼気迫る目つきの2人に威圧され、後方へボールを下げざるをえなかった。
その2分後には、ゴール枠ギリギリへ飛んだMFクロースの強力なミドルシュートを、GKブッフォンが右手ではじき出す。アドレナリン全開の守護神によるファインセーブだった。
レアルも手をこまねいていたわけではない。
前半の半分を過ぎた頃から、2人のセンターバックを高く上げ、中盤の選手たちの距離を詰めながら、じわじわとサイドからの攻勢を強めた。