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巨人・小林誠司と「スターの宿命」。
逃したチャンスが“追いかけてくる”!?

posted2015/04/24 10:50

 
巨人・小林誠司と「スターの宿命」。逃したチャンスが“追いかけてくる”!?<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

まだ阿部慎之助の地位を揺るがすには至っていない小林誠司。周囲の怪我は望むべきものではないが、彼にとってチャンスであることは間違いない。

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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NIKKAN SPORTS

 巨人・原辰徳監督がプレーヤーとして晩年に差し掛かった1989年のことだった。

 このシーズンは打撃を生かすために藤田元司監督により三塁から左翼にコンバートされての出場だったが、開幕直後から、なかなか結果が出なかった。本拠地の試合になれば、より近くなった左翼スタンドの相手ファンから口汚いヤジを浴び、チャンスで凡打に終われば巨人ファンからも罵声を浴びる厳しい日々が続いていた。

「6番、レフト、原」

 そんな状態に藤田監督がしびれを切らして、クリーンアップから打順をいじった。

「結果が出ていないんだから仕方ないよ」

 背番号8はこう唇を噛んで試合に臨んだ。ところが、だ。

 打順をいじってもなぜかことごとく「6番・原」にチャンスが回ってくる。バッティングの状態はどん底なのだから、そうは打てない。結果を出そうと焦れば焦るほど、またまた凡退を繰り返しては批判を浴びることとなったのである。

打順を変えてもチャンスで回るのは、スターの宿命。

 報知新聞の名物コラムニストだった白取晋記者が「激ペンです!」というコラムで、このときの選手・原をこんな風に書いていた。

「いくら打順を変えても、チャンスが原を追いかけてくる。これはスター選手の宿命である」

 藤田監督が打順を変えた意図は、クリーンアップを外して少しでも負担を軽くすることだったはずだ。気楽なポジションで打たせて、思い切ってバットを振らせる。ところがいくら監督が気を使ってスランプ脱出の手助けをしようとしても、原辰徳という選手の持っている星は、それを許さなかったのである。

 どんなに逃げても、チャンスは原というスター選手を追いかけてくる。良きにつけ悪しきにつけ、そういう星を持った選手というのはいるものである。

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