プロ野球亭日乗BACK NUMBER
巨人・小林誠司と「スターの宿命」。
逃したチャンスが“追いかけてくる”!?
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/04/24 10:50
まだ阿部慎之助の地位を揺るがすには至っていない小林誠司。周囲の怪我は望むべきものではないが、彼にとってチャンスであることは間違いない。
今季の巨人で「スターの星」を感じさせるのは?
さて今季、開幕ダッシュに失敗した巨人の戦いぶりが、ようやく安定してきた。
きっかけは捕手だった。
今季の巨人は、昨年まで不動の司令塔だった阿部慎之助捕手を一塁にコンバート。開幕は2年目の小林誠司捕手がマスクを被り、ベテランの相川亮二捕手との併用でシーズンに臨むという構想だった。
ところが開幕6試合目に相川が故障で戦線離脱。その結果、阿部慎之助一塁手が、急きょ、捕手に再コンバートされたのである。
この再コンバートには批判もあった。ただ、そもそも阿部の一塁コンバートを決めた時点で、2年目の小林ひとりではシーズンは乗り切れないというのがチームの結論だった。だからこそベテランの相川獲得という補強を行なった。その相川が早々に長期離脱したのだから、選択肢は限られていた。もちろん小林を育てるチャンスという声もあった。ただチームの勝敗を最優先したとき、最善手として選択されたのが阿部の捕手復帰だったのである。
現時点で捕手・小林には信頼感がない。
逆に言えば捕手・小林には、現時点でそこまでの信頼がないということだ。
実際に、開幕から阿部の復帰までの6試合で小林がマスクを被ったのは29イニング、一方の相川は18イニングだった。その中で小林は、13回先頭打者の出塁を許してトータルの被打率も3割1分3厘、11被本塁打だった。ところが相川が先頭打者の出塁を許した回数は5回しかなく、被打率2割4分2厘で、2本の本塁打しか許していない。
これらの数字は捕手ばかりの責任ではないとしても、やはりこれだけ顕著に差が出るということは、投手だけの責任でもないということでもある。
これこそが、阿部を捕手に戻した大きな理由だったのだ。
そして阿部が捕手に戻れば、小林の出場機会は激減する。これも当然の結果だった。
復帰後は阿部がマスクを被らないときにも、ベテランの実松一成捕手がマスクを被り、好リードで2年目左腕の田口麗斗(かずと)投手の初勝利を演出するなど存在感を見せた。