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米大学バスケ界に203cmのサムライ!
渡邊雄太はNCAAの頂点を目指す。
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph byYukihito Taguchi
posted2015/04/03 10:30
これからの課題は、ディフェンス力とリバウンドの強化だという渡邉。過去の日本人プレイヤー達の米国での活躍を越えられるか、期待がかかる。
苦しい時期の渡邊を支えた、幼少期の原体験。
渡邊自身が不調に陥っただけでなく、同時にチームも勝てるはずの試合も落とすようになり、成績は急降下した。手が届くところにあったトーナメント出場が遠のいたのも、この時期の負け試合が原因だ。
「自分もだめで、チームも勝てない。その2つが同時にきた。あの時は自分の中でも本当にすごく悩みましたし、苦しい時期でした」と振り返る。
毎晩のように体育館に行き、シュート練習をしていた。それでも、試合になると入らない。自分が決められないことでチームにもいい流れを呼び寄せられず、試合も負ける。その悪循環の中で、子供の頃に近所の空き地で、父とシュート練習をした時のことも思い出したという。渡邊にとって、選手としての自分の土台を作った原体験だ。
「当時は親も本当に厳しくて、色々ときつかったこともあった。そういうことも思い出して、今きつくても、絶対シュートが入る日が来るって考えてやっていました」と振り返る。
その日は突然やってきた。レギュラーシーズンの最終戦。試合序盤からシュートが好調で、7本の3Pを決め、21得点をあげた。「あの試合で吹っ切れた」という渡邊は、その後、A10カンファレンスのトーナメント初戦でも12点をあげ、今季最後の試合となったNIT2回戦のテンプル大戦でも15点を記録している。
高いレベルのアメリカで不安が自信に変わる!
悔しい気持ちは、別な見方をすれば「できたはず」という自信の裏返しでもある。確かに、この半年で自信はついたと、渡邊も言う。
「シーズンが始まる前は、自分はどこまで試合に出られるのか、どれだけ自分のプレーができるのかという不安もあった。それでも実際にシーズンが始まって、プレータイムもすごくたくさんもらえて。その中で、波はあったけれど、いい試合ではすごく活躍もできたと思います。だから、アメリカのこういう高いレベルでも自分はできるんだという自信はつきました」
自信があるから、できない時に悔しい思いがこみあげ、次は同じような悔しい思いをしたくないからさらに努力する。これは、おそらく選手を続けている限り途切れることなく、何度も繰り返されることだ。
悔しさは、選手にとっての栄養だ。悔しい思いをするから努力し、努力することで栄養が血となり肉となっていく。だからこそ、もっと上を目指してほしい。これからもたくさん悔しい思いをしてほしい。この先、日本のバスケットボール界を引っ張っていくような選手になるためにも。