野球クロスロードBACK NUMBER
「広島の新井」がファンに浴びた物。
キャンプ初日から“全力”の理由は?
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/02/17 10:30
昨年は阪神で出場試合が100試合に届かず、苦しいシーズンを送った新井貴浩。ドラフト6位で始まった逆転のプロ野球人生に、また一つ大きな花を咲かせることができるか。
中日復帰時の山崎武司と共通する姿勢。
'12年、楽天から中日に復帰した当時43歳の山崎武司は、春季キャンプへ臨むにあたってこんなことを言っていた。
「今の俺は、チームから『山崎はベテランだ、特別だ』と思われちゃだめなの。自分を受け入れてくれた球団に対して、まだまだやれることを態度で証明しなくちゃいけない。だから、初日からガンガン練習するつもりだよ」
そして、山崎は有言実行を果たした。キャンプでのその姿は、大ベテランの山本昌をして「普通にダッシュしたりするからね。ジャイ(山崎の愛称)は本当に元気だな、と思った。羨ましいよ」と脱帽させたほどだった。
愚直なまでにアピールを続ける様は新井も同じだ。だからこそ、早くも成果が表れるのは必然だったのだ。
自己分析の成果が表れた紅白戦でのホームラン。
2月14日の紅白戦。
紅組の5番・DHで出場した第1打席。カウント1ボール2ストライクからの4球目、野村祐輔の高めに浮いた失投を見逃さず強振。打球は左中間スタンドに突き刺さった。第2打席でも今村猛のストレートにうまく反応しレフトオーバーの二塁打と、最高の実戦スタートを切った。
今季、初実戦での手応えを、新井は若干照れくさそうに語った。
「どうかな? と思いながら走っていたので入ってよかったです。初めての実戦でしたけど、思ったより体が反応してくれましたね。2打席目はちょっと体勢を崩されましたけど、下半身で粘れたかな、と思います」
通算1854安打、280本塁打。それだけの実績を持つ男がキャンプ初日から果敢に仕上げていけば、この結果も全く不思議ではない。
だが、早々にアピールに成功した背景は他にもある。ベテランらしい自己分析である。それをハードスケジュールのなかでも見失わずに行ってきたからこそ、の結果なのだ。
打撃練習の一部だけをとっても、テーマは明確だ。新井が説明する。
「力強いスイング。下半身をしっかり使ったスイングをするために練習に取り組んでいますけど、例えば、マシン相手だとそこを意識しても単調になってしまう。だから、打席の前や後ろに立ちながら、それぞれのタイミングに合わせて自分が求めるスイングをしていくことも大事かな、と思っています」