プロ野球亭日乗BACK NUMBER
人々の目が松坂大輔に向く陰で……。
攝津正が受ける“恩恵”と再起。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKeiji Ishikawa
posted2015/02/16 12:05
ソフトバンクのエース攝津正と、日本球界復帰の松坂大輔。松坂の日本での投球も楽しみだが、復活を期す摂津の今季も同じくらい楽しみだ。
佐藤コーチ「昨年は球種を増やしすぎた」
再起を期す、という点では松坂同様に、今季にかける意気込みは大きい。
3年連続で開幕投手を任された昨年は、5月に右肩の筋疲労で登録を抹消。その影響もあり登球回数も134回と4年ぶりに規定回数に満たなかった。
最終的には4年連続の2桁勝利となる10勝(8敗)はマークしたが、防御率3.90、与四球59、奪三振85はプロ入りワースト。また、この右腕の優位性の一番の目安でもあった1イニングに何人の走者を許したかを表すWHIPも1.28と、こちらも自己最低の数字に終わっている。
だが昨年まで楽天の投手コーチとして相手ベンチから攝津を見ていた佐藤義則投手コーチは、この右腕の再生に自信を見せている。
キャンプ2日目にはブルペンでユニフォームの裾を掴みながら投球をさせ、重心を低く保つように指示。その後もブルペンでは体重移動の際の上下動を少なくしたりと、細かな技術的指導を行なっている。
「彼の一番の持ち味はカーブとシンカー。昨年はカットボールやシュートなど球種を増やしすぎて、フォームそのものが崩れてしまっていたように見えた」
そこで今キャンプでは(1)重心を落として上下動を少なくすること、(2)しっかりとしたフォームで腕を振ること、という2点を意識させ、一昨年までの正確無比な制球力とボールの切れを取り戻させようとしているわけだ。
工藤監督の大人扱いに、エースの自覚で応じる。
このキャンプでは、松坂らと共にマイペースでの調整を許されている攝津。しかし休日返上でトレーニングに励むなど、工藤新監督の大人扱いに本人はエースの自覚で応えている。
「野球は年齢でやるものではないし、投手は投げる場所がなくなったら続けられない」
こう語る本人は、4年連続となる開幕投手についても言葉は少ない。
「あまり大きなことは言わない。競争に勝った方が投げるということですから。まずはフルにローテーションを回って2桁勝利して連覇したい」
松坂が動くと、一つの山が動くようにメディアとファンもついて移動する。その後のブルペンでは背番号50が黙々と投げ込みを行なっていた。
攝津正もまた、松坂効果の恩恵にあずかっている、その一人だった。