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「主役」宇佐美貴史の成長度。
ガンバ優勝までの1年を振り返る。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byAFLO
posted2014/12/08 11:55
ガンバ大阪のJ1復帰初年度優勝をもたらしたエース・宇佐美貴史。開幕から8節を欠場したものの、最終的にゴール数は10の大台に乗せた。
最大勝ち点差は14という大差。
宇佐美が語るとおり、鹿島に続き川崎にも1ー0で勝った。優勝するための最大の難所だった上位対決を3連勝で乗り越え、首位浦和を射程距離に捉える。最大14点差あった勝ち点差は、わずか5点差になっていた。
だがチームの好調の陰で、宇佐美は調子を落としていた。鹿島戦からFC東京戦まで3週間で7試合という過密日程を強いられ、ゴールもナビスコカップ決勝をはさみ、浦和戦まで公式戦8試合不発。相手に研究され、厳しいマークに合い、チームをひっぱってきた疲労も蓄積していた。
「いろいろ考えてしまって、ちょっと自分のいいところが出せていない」
言動は強気だが、心は繊細。
だが、宇佐美が調子を落としても、代わって出場した選手たちが次々とチームを救った。
ナビスコカップ決勝では、宇佐美と同期の大森が決勝ゴール。首位浦和との直接対決では、宇佐美が下がった後、佐藤晃大と倉田秋が試合終盤に2ゴールを決めて劇的な勝利を挙げた。
「今のガンバはほんまに強い。天皇杯の準々決勝とかナビスコの予選は、今ちゃん(今野泰幸)やヤットさん(遠藤)がいない中、選手を総入れ替えでやったけど結果を出した。僕がダメでも途中で出た選手が結果を出しますし、それで僕も危機感をもってやれている。チーム全体として力がついたなぁって思いました」
戦う集団に変貌したガンバは第33節で神戸にも勝ち、鳥栖と引き分けた浦和を捉えてついに首位に立った。宇佐美も神戸戦前の天皇杯準決勝で公式戦9試合ぶりに2ゴールを挙げてゴール欠乏症から脱出。神戸戦でも2ゴールを挙げて、調子を完全に取り戻した。
ナビスコカップ決戦の数日前、宇佐美の上唇は赤く腫れていた。ついに優勝に王手を掛け、連戦の疲れとプレッシャーがあったのかもしれない。言動は強気だが、繊細な心を持つ選手でもあるのだ。