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「主役」宇佐美貴史の成長度。
ガンバ優勝までの1年を振り返る。
posted2014/12/08 11:55
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
AFLO
Jリーグ最終節、ガンバ大阪は徳島ヴォルティスを相手にスコアレスドローに終わった。
優勝を確定できず、選手たちは他会場の結果を待つ。数分後、2位の浦和と3位の鹿島がともに敗れた報せを受けると、宇佐美貴史はチームメイトと抱き合うこともなくゴール裏のサポーターに向って走り、拳を突き上げた。
「サポーターに感謝したくって」
宇佐美は声を弾ませて、そう言った。
ガンバ大阪、9年ぶり2度目のリーグ優勝の軸は、宇佐美だった。
シーズン開幕前、宇佐美はドイツから帰国して3年ぶりにJ1の舞台で戦うことを楽しみにしていた。
「J1というステージで戦うために、レベルアップしないといけない。まず、技術を生かすためにフィジカルを鍛えて体重が75、76kgになった。うまく、強くて、速い。それが揃ったら誰も止められなくなるし、ムラがなくなると思う。1点でも多く取ってチームに貢献したい」
肉体改造をほどこし、開幕はすでに視野に入っていた。しかし2月のキャンプ中、左ヒ骨筋腱脱臼で全治8週間の離脱を余儀なくされる。開幕には間に合わず、ブラジルW杯も絶望。この時期の宇佐美は口数が減り、人目を避けているようにも見えた。
宇佐美のシーズンが始まった徳島戦。
エース不在の影響は大きかった。
攻撃の柱を失ったチームは、J1開幕から下位に沈んだ。低迷し、苦しむチームに責任を感じた宇佐美は「復帰したら必ず自分がチームを救う」という気持ちを強く持ってリハビリを黙々と続けた。
5月6日、徳島戦で今シーズン初のスタメン出場を果たす。チームは3-0で勝利し、連敗を3でストップ。自らも復帰を祝うゴールを決め、勝利に貢献した。
「スタメンに復帰した試合で、得点を決められた。あそこから僕のシーズンが始まった」