欧州CL通信BACK NUMBER
上手くなければ、攻撃的になれない。
レアルがCLで示した“単純な真実”。
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byAFLO
posted2014/11/07 10:40
訪れたチャンスを確実に決め、CL4戦連続のゴールでレアル・マドリーのベスト16進出を決めたベンゼマ。「上手い」ということが、可能な戦術の幅を広げる。
リバプールの守備にロナウドがしびれを切らし……。
それでも最初の10分間は、守勢に回ったリバプールが確かな手応えを得た。
動きの良さが際立ったのは、ダブルボランチの一角に据えられたMFルーカスだった。守備ではレアル・マドリーのパスの出どころを読み、鋭い寄せと絶妙なポジショニングでボールを奪う。攻撃では積極的に顔を出して中央でパスを受け、テンポよくさばいて相手に的を絞らせない。ボールを奪ってからの時間的、メンタル的な余裕を、彼が一人で生み出していた。
リズムをつかめないレアル・マドリーは、開始早々からエースのクリスティアーノ・ロナウドがしびれを切らして中盤に下りてきた。しかし、ルーカスが仕掛ける巧妙な罠に自ら飛び込み、たったの15分間で5回ものボールロストを繰り返す。
レアル・マドリーは4-1-4-1の左サイドに位置したロナウドや、右サイドのハメス・ロドリゲス、さらにイスコやルカ・モドリッチがポジションを流動的に入れ替えながら攻め手を探すが、どれだけテンポ良くパスを回しても相手が前に出てこない。つまり、突くべきスペースが生まれない。
攻めあぐねていたかに見えた攻撃は、布石だった。
ところがそう思った矢先、この試合の決勝ゴールはいとも簡単に生まれた。攻めあぐねていたかに見えた攻撃は、結果的にはこのゴールの布石となっていたのである。
27分、中盤左サイドでイスコ、ロナウド、イスコと短く速いパス交換を経て、タッチライン際をスルスルと駆け上がってきたマルセロへ。マルセロはグイとボールを運んで球足の速いグラウンダーのクロスを送り、ファーサイドで待ち構えたカリム・ベンゼマが難なくフィニッシュ。サンティアゴ・ベルナベウが歓喜に揺れた。
追加点こそ奪えなかったものの、レアル・マドリーは90分を通じてこの攻撃を繰り返した。