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80200人が目撃した香川真司の帰還。
変わらぬ愛とプレー、変わったものは?
posted2014/09/14 15:30
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
AFLO
シグナル・イドゥナ・パークには以前と変わらないものであふれていた。
ロイスがドイツ代表のスコットランド戦で負傷したこともあり、2010-2011シーズンからドルトムントで2シーズンプレーしたときと同じように香川真司はトップ下でスターティングメンバーに名を連ねた。
試合前のウォーミングアップに出てきたときにも、試合が始まる前にも、25000人を収容する、黄色い壁と言われるゴール裏の南スタンドからは香川の応援歌がピッチに降り注いだ。香川も手を挙げて、それに応える。
2008年から指揮をとるクロップ監督は、このシーンをこう振り返っている。
「最も素晴らしい瞬間だったのは、ピッチに入るときの“カガワ・シンジ”の歌がこだましたときだった。あんなのは久しく聞いていなかったね。ものすごい音量で、ジャージが音でふくらんだほどだよ」
スタンドには「真司」と書かれた鉢巻を巻くファンがいて、以前と同じ位置に日の丸を掲げるファンがいた。変わったのは、「23 KAGAWA」とプリントされたユニフォームを着たファンの他に、「7 KAGAWA」と入ったユニフォームを身にまとうファンがいたことくらいだ。
香川の新しい背番号の入ったユニフォームは発売から6日間ですでに1万枚を売り上げており、街の中心部にあるファンショップのメインディスプレーには売れ筋商品であることが示されるかのように、「7 KAGAWA」と入ったユニフォームが飾られている。
スタンドには、香川のゴールへの期待が充満していた。
試合開始早々の前半5分に、ペナルティエリアの外から香川がチーム最初となるシュートを左足で放ったが、クロスバーの上を越えてしまった。80200人がつめかけたスタンドからは、以前と同じように香川のゴールがすぐに生まれるのではないかという期待が充満していた。
実際、香川もゴールに絡むべく、高い位置でボールを受けようとしていた。
「なるべく中盤に下がらないように我慢していました」
思い起こせば、ドルトムントでの最初のシーズンでは、しばしばそのように語っていた。ブンデスリーガの公式ホームページで前半戦のMVPに選ばれたころ、香川は自身のフィニッシャーとしての役割を意識していたのだ。