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錦織圭、ジョコビッチ撃破で決勝へ!
絶対王者すら押し切る“攻めの姿勢”。
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph byGetty Images
posted2014/09/07 12:00
決勝の相手マリン・チリッチとの過去の対戦成績は錦織の5勝2敗。四大大会制覇は目前だ。
勝敗を分けた、第3セット。
勝敗を分けたのは第3セットだった。相手のサービスゲームを破って5-3としながら、すぐにブレークバックを許し、結局タイブレークにもつれる。ここでも5-2から追い上げられたが、最後は錦織がものにした。
「第3セットぐらいから、ポイントを早めに終われるように、自分から打っていった」と錦織。そこまでは相手の深いボールに難渋していたが、前のポジションに入っていけるようになり、にわかにプレーがアグレッシブになった。
このセット、錦織が決めたグラウンドストロークのウイナーは10本に達した。自分本来の速攻テニスを相手に押しつけるかのような、力強いプレー。ジョコビッチはその圧力をこらえきれず、フォーストエラー(相手に強いられたミス)はこのセットだけで9本に達した。
ここで相手の手堅い守りを崩す糸口が見えたことが大きかった。錦織のプレーに一気に攻撃性が増した。心地よい、乾いた打球音がアーサー・アッシュスタジアムに響く。錦織のタイミングの早いショットが次々とコートに突き刺さる。
ジョコビッチがサンドバッグのように叩かれる。
ニューヨーク・フラッシングメドウには、数日前から猛暑が戻った。試合中、コート上で摂氏35度を計測した炎熱地獄のようなスタジアムコート。第4セットに入ると、ジョコビッチの動きは目に見えて鈍くなる。一方の錦織は、4時間超の5セットマッチを2試合もこなしたあとだというのに、尻上がりに動きに切れが出た。
このセットは錦織が相手のサービスゲームを2度もブレークするワンサイドゲームとなった。ジョコビッチが第10シードにサンドバッグのように叩かれるのは、世界のテニスファンには目を疑うような光景だったはずだ。
「自分が本来やりたいようなプレーができなかった。ミスも多く、ボールが短くなってしまった」と嘆いたジョコビッチ。だが、一方で「彼のバックハンドは堅実だし、コートのどこからでも最高の両手打ちバックハンドを打ってくる。素早くて、よく拾う。また、短いボールは必ずアタックしてくる。今の彼はオールラウンドのプレーヤーだ」と錦織に賛辞を惜しまなかった。