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ドルトムントはなぜ移籍金を出せた?
香川真司、2年前の“置き土産”。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2014/09/03 10:40
ドイツの地で再会したユルゲン・クロップ監督と香川真司。復帰初戦は13日のフライブルク戦が濃厚と見られている。
ドルトムントが移籍費用を捻出できた理由とは?
昨シーズンの反省を踏まえて、すべてのポジションの層を厚くすることがこのオフシーズンの補強の重要項目だった。
「シンジの移籍の可能性が浮上したのは、つい数日前のことだ」
移籍が決まった時点で、ツォルクSDはそう話したが、すぐに香川獲得に動くことが出来たのは、そのようなクラブの方針があったからだ。
もっとも、香川を欲しいと思うクラブや、中盤の選手層を厚くしたいと考えるクラブならば世界中にいくらでもある。実際にドルトムントが費用を捻出できたのには理由がある。
昨シーズンのドルトムントが計上した利益は約1200万ユーロ。ゼロ年代には借金が膨らみ、クラブ消滅の危機まで騒がれたクラブは、3年連続で1000万ユーロ以上の利益を残している。実はそこにも香川の貢献があったという。
'11-'12シーズン終了後に1600万ユーロの移籍金を残して、香川はマンチェスター・ユナイテッドへと移籍した。このときの移籍金の一部を使って、ドルトムントはスタジアムの部分改築に乗り出した。ゴール裏席のセキュリティー強化もその一つだが、ここでクラブに大きく利益をもたらすことになったのが、バックスタンドの改築だった。
'11-'12シーズンと比べて、'12-'13シーズン、ホームのジグナル・イドゥナ・パルクの収容人数は150人ほど減った。しかしそれは、バックスタンドの改築によりビジネス席を大幅に増やしたからだ。その結果、観客動員数は微減ながら1試合あたりの収益は大幅に増えたという。この収益も香川復帰のための資金捻出に一役買ったのは想像に難くない。
ロイスとの競争を制するためには、やはりゴールが必要。
もちろん『キッカー』誌が、「ロイスもいるので、香川にすぐにトップ下のポジションが与えられるとは限らない」と記したように、ここから先の香川の運命を決めるのは、彼の努力、そしてチャンスを確実にモノにするだけの決定力次第だ。
すでにドイツでは香川の移籍を「今夏最高の移籍」だと評されるなど、香川がドルトムントへ復帰したことについて揶揄する声はほとんど挙がっていない。レアル・マドリー、リバプールを経て一昨季からドルトムントに戻ってきたサヒンもそうだが、かつてプレーしたクラブに戻るのはいたって普通のことだからだ。
そこでCLのタイトルが獲得できたのなら、今回の移籍は世界中の誰からも賞賛を受けるものになるはずだ。