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“守備の人”細貝萌が磨く攻撃性能。
類希なる成長力は再び発揮されるか。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2014/08/27 10:40
開幕戦のブレーメン戦で2-2のドローに終わったものの、中盤で気の利いたプレーを見せた細貝。浦和時代のチームメートである原口の良さを引き出せれば、攻撃面でも存在感を放てるはずだ。
戦術的ファールを厭わないのが細貝の持ち味だが……。
昨シーズン、ルフカイ監督は細貝への賛辞を惜しまなかった。
「今日の試合ではハジ(細貝)だけがファイトしていた」
「ハジはうちのベストプレーヤーだ」
似たような言葉なら、いくらでも挙げることができる。
ファンからの評価もそうだ。先日、ヘルタのファンの少年が細貝のユニフォームをもらって、泣いて喜ぶ姿が話題になった。日本に住む読者の人たちは、少年の純粋な心やユニフォームをあげた細貝の粋な計らいに心を動かされたかもしれない。
しかし、ドイツに住む人間からすると、あの涙の意味は少し変わってくる。ヘルタの「ベストプレーヤー」のユニフォームをもらえたからこそ、少年は感動のあまり涙を流したのだろう。
そんな細貝の評価が高かったのは、彼の見せるハードな守備があったからこそだ。昨シーズン、彼はリーグで6番目に多い71回のファール(ハンド含む)を犯しているのだが、警告を受けたのは4回だけだった。そのため、34試合中で33試合に先発して、出場停止は一度もなかった。ファールが多いのにもかかわらず、警告が少なかったのには理由がある。ピンチに直結するようなシーンでファールを犯す回数よりも、ピンチにつながりそうな危険を早い段階で察知した上で「戦術的ファール」で相手の攻撃を上手に止めていたからだ。
「ベストプレーヤー」に足りないもの。
ただ、ヘルタで「ベストプレーヤー」となった細貝に足りないものがあったのもまた事実だ。その一つが「意識している」と語っているような、攻撃につながるプレーではないだろうか。
『キッカー』誌は毎シーズン終了後に、各ポジションごとの優秀選手のランキングを発表する。'11-'12シーズン、アウクスブルクで33試合に出場した細貝は守備的MF部門で11位に入っていた。しかし、同じく33試合でプレーした昨シーズンはこのランキングにノミネートされなかった(ただし、昨シーズンは10位までの発表)。
もちろん、このランキングは相対評価によるものなので、一概に比較することはできない。ただ、アウクスブルクでプレーしていたときよりも、昨シーズンのパフォーマンスの方が上だったのは疑いようがない。