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今夏の甲子園に漂う「荒れる」予感。
逆転、スタンドの空気、そして東海!?
posted2014/08/13 10:30
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
Kyodo News
今夏の甲子園は荒れる――。
この夏は、それを予感させる出来事が地方大会から次々と起こった。
昨春の選抜大会で浦和学院を全国優勝に導いた小島和哉、済美の最速157km右腕・安楽智大、昨夏を制した前橋育英の高橋光成と、2年時から注目を集めた好投手たちがいずれも3回戦で早々に散った。
また、星稜が石川大会の決勝戦で最終回、一挙9点をたたき出し、0-8から逆転サヨナラ勝ちしたように、劇的な逆転勝利で甲子園出場を決めたチームが目立った。最終回を迎えた時点で、聖光学院は4点差、東海大甲府は3点差をつけられていたが、それぞれひっくり返した。
その余波か、この6日にプロ野球でもロッテが最終回に6点を挙げ、8-7で楽天に逆転サヨナラ勝利を収めた。
できる、と思える気持ちが「不可能」を「可能」にすることがある。
この夏、選手たちは、8点差をつけられても逆転できる可能性が残っていることを知っている。その心理が、試合をどう演出するか。
「荒れる」予感は大会初日に現実のものとなった。
試合内容だけでなく、この夏は、天候も荒れている。台風の影響で、本戦が大会史上初めて開幕から2日続けて雨天順延となった。
「荒れる」という予感が現実となったのは大会初日だった。
優勝候補の一角で、春夏連覇をねらった龍谷大平安が開幕戦に登場。1回表、先発投手の大乱調で5失点し、春日部共栄に1-5で敗れるという波乱が起きた。
昨年からの流れも無視できないところだ。昨夏はノーマークだった前橋育英が、初出場・初優勝を飾った。2004年に駒大苫小牧が東北・北海道勢として初優勝をした直後、'05年は駒大苫小牧の連覇、'06年は早実、'07年は佐賀北と、4年連続で前評判が決して高くなかった高校が大会を制した。
昨夏の前橋育英の全国制覇が、似たような流れの端緒となるかもしれない。