スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
さようなら、最高の「8番」シャビ。
代表引退、バルサ残留という決断。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byAP/AFLO
posted2014/08/13 10:40
失意の結果に終わったワールドカップ中、練習で盟友のカシージャスらと談笑するシャビ(右)。もうスペイン代表で彼のプレーを観ることはできない。
今は、もう1年バルセロナのシャビを見られることを喜ぼう。
「ルイス・エンリケははっきり言ってきたよ。自分も他の選手たちと同じくゼロからスタートさせると。脇役的存在になるとも、特別扱いするとも言われていない。個人よりチームを優先し、チームのために全てを尽くしたい。どんな時でも嫌な顔はせず、子供の頃に抱いていたのと同じ希望をもってチームの一員になるだけさ」
たとえ控えに回っても、チームのために全力を尽くす。心機一転した本人はそんな決意まで示しているが、もちろん周囲は彼をベンチ要員とは見ていない。
実際、8月2日に行なわれたニースとの親善試合では後半から登場して試合の流れを一変させ、健在ぶりをアピールしたばかりだ。これを受け、これまでさんざん移籍決定と報じてきた地元メディアは「シャビがいると違う」「シャビの残留が今夏最高の補強」と評価を改めはじめている。
さらに今季は引退したカルレス・プジョルに代わって第1キャプテンを務めることも決まった。在籍年数の長い4選手がキャプテンを務めてきたこれまでの伝統とは異なり、今季はルイス・エンリケの意向で選手たちの投票によってキャプテンが選ばれたのだから、その意味は大きい。
ラ・ロハの8番を着る姿がもう見られなくなるのは残念だ。ただ今は、もう1年、アスルグラナの6番を着たシャビのパスを見られることの方を喜ぶべきなのだろう。
先にデルボスケが言っていた通り、彼はフットボール界における唯一無二の貴重な存在なのだから。