スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
さようなら、最高の「8番」シャビ。
代表引退、バルサ残留という決断。
posted2014/08/13 10:40
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph by
AP/AFLO
分かっていたことではある。だが実際に本人の口からその事実を知らされると、やはり寂しいものだ。
8月5日、シャビ・エルナンデスが会見を開き、スペイン代表から引退する意思を表明した。
「代表を引退する決断を下した。自分の時代は終わったと思う。協会関係者、歴代の監督たち、みなに感謝したい。代表で素晴らしい時代を過ごせたことを誇りに思う。この6~8年、多くの成功を手にしてきた。だから満足して引退できる。これからは代表チームのファンの一人だ」
2000年11月、ホセ・アントニオ・カマーチョ監督の下20歳でデビューして以降、スペイン代表で積み重ねてきた試合数は歴代2位の133戦(100勝22分11敗、13得点)。ユースカテゴリーを含めればその数字は190にまで上る。国際Aマッチで通算100勝に達したのは世界中で彼と親友のイケル・カシージャスの2人だけだ。
「監督以上に重要な存在」とシャビを称えたデルボスケ。
だがシャビが“ラ・ロハ(スペイン代表)”にもたらした最大の功績は、故ルイス・アラゴネス前監督と共にこの国のフットボールの概念を一変させたことにある。シャビの会見から間もなく、協会のウェブサイトに掲載されたビセンテ・デルボスケ監督のメッセージが印象的だった。
「我々は代役を見つけることが困難な、唯一無二の選手を失った。ピッチ内外で彼の不在を感じることだろう。彼は多くの成功をもたらした現在のプレースタイルにおけるキーマンであり、監督以上に重要な存在だったのだから」
「監督以上に重要な存在」なんて言えてしまうデルボスケの謙虚さにも頭が下がるが、実際にシャビがそれだけの存在だったことも事実だ。もし、アラゴネスが彼を中心に据えて現在のプレースタイルを確立する決断を下していなかったら、たとえどれだけ才能ある選手を多く抱えようとも、2度のEURO優勝、ワールドカップ初制覇という快挙を成し遂げることは難しかったにちがいない。