リンクス用に特訓したショットの出番はなかった。

　パットの際、グリーン上に目標となるスポットを取り、そのスポットの上にボールを転がすことだけを考える。

「それでカップに沈めばグレートだけど、沈まなければ沈まないで、次のホールでまた同じようにトライするだけのこと。プロセスとスポット。今週はこの2つのキーワードをずっと唱えながら戦っていた」

　とはいえ、猛練習してリンクス攻略のためにバリエーションを増やしたさまざまなショットは、ロイヤルリバプールでは実を言うと出番はほとんどなかったのだそうだ。

「今週はリンクスとしては天候に恵まれ、風も強くはならなかった。だから、特別な打ち方やショットは必要ではなかった。それよりも、自分の心をいい状態に保てたことのほうが僕にとってはずっと大きかったと思う」

　そう、どんな技術を用いたかではなく、むしろ積んできた練習と努力、その成果への核心がマキロイを支えていた。自分の感性やインスピレーション、自分の目を信じることができていた。

「再びメジャーを制する力が僕にはあるはず」

「再びメジャーを制する力が僕にはきっとあるはず。その能力を絶対に疑わなかった」

　だからこそ、ショットを曲げ、短いパットを外し、「ひどいミスをした」と振り返った5番、6番の連続ボギーのあとも焦らず、好プレーを続けることができた。

「7番は“寄せワン”でパーを拾い、8番もグッドショットでパー。9番と10番のバーディは大きかった。とりわけセルヒオが迫ってきた直後に奪った10番のバーディのおかげで、後半は心地良くプレーできた」

　一時はガルシアに2打差まで詰め寄られたが、マキロイはそれでも穏やかな表情を保っていた。喜怒哀楽の起伏は見せず、どんなときも心の平穏を保った。

　72ホール目。ウイニングパットとなったパーパットを沈めたときでさえ、激しいアクションやガッツポーズは見せず、やっぱり笑顔をたたえたまま、マキロイは小さく何度も頷いた。

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