F1ピットストップBACK NUMBER
激烈な声援でハミルトンが逆転勝利。
英国人にとってシルバーストンとは。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2014/07/13 10:30
ファンに勝利を報告するハミルトン。シルバーストンで50回を数えるイギリスGPで今季5度目の優勝を果たした。聖地には毎年10万人を超える観客が訪れる。
単なるファンではなく、“エンスージアスト”。
そういう土地柄だからこそ、シルバーストンで開催されるレースは、ほかの国の母国グランプリとは比べものにならないほど、重要な一戦になるという。'95年にベネトンを駆ってイギリスGP初優勝を挙げたジョニー・ハーバートは、彼らにとってイギリスGPがどのような意味を持つのか説明したことがある。
「シルバーストンにやってくる人々は、単なるファンじゃない。エンスージアスト(熱狂的支持者)なんだ。私は2000年にF1を引退したんだが、テレビの解説などで訪れるたびに、現役時代からずっと応援してくれていたファンが、いまでも私の駆っていた古いF1マシンの写真を差し出してサインをねだってくるんだ。だから、イギリス人ドライバーは皆、ここで無様なレースはできないんだよ」
母国グランプリで強さを発揮するイギリス人たち。
それは、イギリスGPでもっとも多くの勝利を挙げているドライバーが、イギリス人のジム・クラークであることからもわかる。彼は生涯で2度しか年間王者のタイトルを獲得できないまま事故で亡くなってしまったが、母国グランプリでは圧倒的な強さを発揮した。1962年から'65年に4年連続で優勝すると、'67年も制覇。4冠王者のアラン・プロストと並んで通算5勝を挙げた(5勝のうち2勝はシルバーストン以外で開催された)。
この2人に続く4勝を獲得しているのが、'92年チャンピオンで同じくイギリス人のナイジェル・マンセルだ。ブランズハッチで開催された'86年以外の3勝は、すべてシルバーストンでのものである。
マンセルのシルバーストン初優勝となった'87年はチームメートのネルソン・ピケとサイド・バイ・サイドのバトルの末の勝利という逆転劇だった。
チェッカーフラッグ後に興奮した観客がコースになだれこみ、ウイニングラン中にガス欠したマンセルを取り囲んでお祭り騒ぎとなったほどだ。