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激烈な声援でハミルトンが逆転勝利。
英国人にとってシルバーストンとは。
posted2014/07/13 10:30
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images
現在のF1には3つのクラシックレースがある。ひとつは華やかな祭典であるモナコGP。もうひとつは情熱のグランプリ、イタリアGP。そして、3つ目がF1の聖地シルバーストンで開催されるイギリスGPだ。
シルバーストンがF1の聖地と呼ばれる理由は2つある。
ひとつはいまから64年前の1950年に初めてF1世界選手権が開催された場所だったこと。もうひとつは、「モータースポーツ・バレー」の中心に位置していることだ。
今年F1に参戦している11チーム中、じつに8チームがイギリスにファクトリーを構えている。昨年4連覇したオーストリア国籍のレッドブルも、今年チャンピオンシップを独走しているドイツ国籍のメルセデスAMGも、ファクトリーがあるのはイギリスなのである。
GP期間中のパドックは周辺に住む関係者でごった返す。
しかもどのファクトリーも、シルバーストンから高速道路で約1時間以内に集中している。もっとも遠いウォーキングにあるマクラーレンの125kmという距離を除けば、ウイリアムズのグローブは65km、ケータハムのリーフィールドは59km、ロータスのエンストーンは40km、レッドブルのミルトン・キーンズは33km、マルシアのバンバリーは24km、メルセデスのブラックリーは13kmと、車を30分も走らせれば到着する範囲におさまっている。
ファクトリーの住所が「シルバーストン」であるフォース・インディアにいたっては、サーキットの正門から数百mのところに本部があり、イギリスGP期間中のミーティングをサーキットではなく、態勢の整ったファクトリーに帰って行なった日もあるほどだ。
F1チームだけではない。今年メルセデスのパワーユニットを供給しているメルセデス・ハイパフォーマンス・パワートレインズの製造施設があるブリックスワースは、シルバーストンから33kmのところにある。また、トロ・ロッソの風洞実験を行なっている施設も23kmの場所にある。したがって、多くの従業員がこの周辺に暮らしており、その家族や友人を含めた関係者だけでも数千人にのぼるため、毎年グランプリ期間中のパドックは大勢の関係者でごった返す。