ブラジルW杯通信BACK NUMBER
W杯最大の衝撃、ハメス・ロドリゲス。
ネイマールとの「22歳の10番」対決へ。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byGetty Images
posted2014/07/02 11:40
聖地マラカナンで2ゴールを決めたハメス・ロドリゲスは「ずっとマラカナンで点を取りたいと思っていた。そして今日、それが実現したんだ」と満足のコメント。
マラカナンをどよめきで包んだ一撃。
バイタルエリアでゴールに背を向けていた背番号10は、パスを受ける直前に素早く周囲の状況を確認。胸でトラップすると振りむきざまに左足をしならせ、GKの頭上を越えるシュートを打った。トラップからシュートまでの一連の動きはこれぞ芸術と言える美しさ。今大会最高の一撃に、7万3804人を飲み込んだマラカナンはどよめきと歓声で覆われた。スアレスのお面を頭につけて大声援を送っていたウルグアイサポーターは一瞬にして静まりかえった。
芸術的なボレーで均衡を破ったレフティーは、後半5分にはフアン・クアドラドの献身的なヘディングからの落としを今度は右足でシュート。ベスト8入りを決定づけるゴールを決めた。
「勝利を収め、次戦に進出したことを幸せに感じている。これは歴史的勝利。でも、これから最も厳しい戦いがくる。ベスト8を突破したい」
世界の何十億の人々に強烈な名刺を切った男は、圧巻の一撃からは想像もつかない可愛らしいダンスも披露し、自らの先制点を祝福した。
精神的支柱であった絶対的エースFWラダメル・ファルカオが不在のW杯で、22歳にして確かなゲームコントロールを見せている背番号10を、アルゼンチン出身の名将ホセ・ペケルマン監督は手放しで称賛している。
「ハメスは責任を負う、重要な存在になった。今回が彼のW杯になるかもしれないということに疑いはない」
敵将にまで絶賛されるその才能。
礼賛の声はそれだけではない。驚くのは敵将の褒めちぎりようだ。ウルグアイのオスカル・タバレス監督は「彼のことはアルゼンチンでプレーしていたときから見てきた。私は彼がW杯のベストプレーヤーだと信じている。これは誇張ではない。サッカー界は彼のような才能を必要としている」と絶賛。さらには「マラドーナ、メッシ、スアレス、ロドリゲス。彼らの才能は特別な贈り物をくれる」とまで言った。
FIFA公式サイトに掲載されているコラムも、ロドリゲスを形容する表現が試合を重ねる毎にグレードアップしている。ウルグアイ戦後は「魔法のようなゲームコントロール」「ハメス・ロドリゲスが2014W杯の衝撃であることに疑問はない」「2014W杯のスターの1人」となっていき、ブラジルとの準々決勝を3日後に控えた7月1日のコラムでは「間違いなく現時点で“大会の顔”だ」と紹介された。