プロ野球亭日乗BACK NUMBER
“ダメ起用”の批判を覆した男、
山口鉄也が中継ぎ投手の未来を開く。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2014/06/27 10:30
2008年から昨季まで6年連続60試合登板のプロ野球記録を樹立したほか、通算202ホールドも歴代1位。今後、記録をどこまで伸ばせるか。
中継ぎを重要視する巨人・原辰徳監督。
日本でも、中継ぎ、セットアッパーをときにはクローザー以上に重要な役割として考えているのが巨人の原辰徳監督だった。
「山口をジョーカー的に使うことが、チームにとっては一番の力になると思っている」
原監督がこう名前を挙げたのは、6月6日にプロ通算200ホールドを達成した左腕・山口鉄也投手である。
山口も2008年の一軍定着以降、'10年には一度は先発でスタートしたが結果が出ずに、それ以来、再びリリーフ専門で実績を積み上げてきた。先発ではどうにも持ち味を発揮できず、リリーフを天職としているところはベタンセスと同じ(ベタンセスが同じなのだが……)だった。
7、8、9のどこかという「流動的なジョーカー起用」
そして、原監督の山口の使い方はベタンセス以上に流動的である。
昨年までクローザーの西村健太朗投手につなぐためにスコット・マシソン投手と山口が7、8回を受け持つことが多かった。今季は西村が故障で戦線を離脱したため、基本的にはクローザーのスコット・マシソン投手につなぐセットアッパーと位置付けられているが、場合によっては7回からマウンドに上がるケースもある。
「終盤3回の打順を見て、相手打線の一番強いところ、左の多いところに山口を使うようにしている。それがチームとして彼の力を最大限に利用する方法だからね」
それが原監督の言う「ジョーカー的」な起用というわけだ。
ただ、以前はこういう順番を固定しないリリーフ投手の起用法は、選手の心理を全く理解していないダメな方法と批判を浴びることも多かった。リリーフ投手は自分の出番に合わせて気持ちを集中して、ブルペンで仕上げる。だから出番がコロコロと変わってしまっては、精神的にも肉体的にも十分な準備ができないというのが論拠だった。
そうして選手のやる気を無くさせるダメ起用として、原監督の山口の起用法はヤリ玉に上げられることがあったのだ。