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<ノンフィクション> セルジオ越後 「ニッポンを叱り続けた男の人生」
text by
城島充Mitsuru Jojima
photograph byNorihiko Okimura
posted2011/01/25 06:00
『キャプテン翼』に抱く複雑な思い。
1時間半の約束だったが、セルジオは3時間以上も熱弁をふるい続けた。その言葉を追うと、日系ブラジル人2世という境遇で育った彼自身もまた、さまざまな節目でいろんな人やチャンスと出会い、活路を見いだしてきたことがわかる。だからこそ、彼は実った稲穂を収穫する側ではなく、種をまく道を選んだのではないか。
「あるとき、友だちに言われたの。おまえ、日本で凄く稼いだなって。いや、そんなにお金もらってないよっていうと、宮古島へ行っても北海道行っても一緒に食事をしてくれる人や泊めてくれる人がいる、そのほうがお金よりもずっとすごい財産だよって。でも、僕でもかなわないものが一つだけあるの……」
人なつっこい笑みを消して言ったから、続いた言葉がジョークかどうかはわからない。
「漫画の『キャプテン翼』。僕が30年かかった仕事を、たった2年でやっちゃったんだから。あれには僕も勝てないな」
セルジオ越後(せるじおえちご)
1945年7月28日、ブラジル・サンパウロ生まれ。'64年にコリンチャンスとプロ契約を結ぶ。'72年来日、'78年「さわやかサッカー教室」をスタート。Jリーグ開幕以降、「辛口」サッカー評論家として、TV・新聞・雑誌などあらゆる媒体で活躍するように。現在は日光アイスバックスの運営にも携わっている