日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
日韓戦の死闘の果てに見えたもの。
日本代表が露呈した“別の顔”とは?
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2011/01/26 12:00
PK戦での勝利の瞬間、ザッケローニにカタール戦で見せたような派手なガッツポーズはなかった。
アジアにおけるライバル、韓国との一戦となったアジアカップ準決勝。試合後の会見では冷静にゲームを分析する指揮官の姿があった。
「予想通りタフなゲームになった。前半は日本のほうが良かった。コンビネーションでサイドを崩して3つのビッグチャンスがあった。しかし後半は韓国のほうが良かったと思う。(韓国は)走力とフィジカルがあり、ロングボールからセカンドボールを拾われて押し込まれてしまった」
真っ向からの意地と意地のぶつかり合いで、ライバルの韓国を振り切った意義はとてつもなく大きい。しかしながら、ザッケローニが会見の席で口にしたように、この勝利の裏側には前半と後半ではあまりに“別の顔”を持った戦いをしてしまったという事実も忘れてはならない。
前半の華麗な試合運びは、追加点まで予想させたのだが……。
前半の日本は、華麗かつスピードアップした攻撃でライバルを翻弄した。
17分には中盤の組み立てから遠藤保仁が左サイドの裏に攻め上がった長友佑都へパス。その長友のクロスに岡崎慎司が飛び込んでシュートを放つ。
PKで先制点を許しながらも、落ち着いて攻撃を組み立て26分にはまたも中盤の素早いパスワークから今度は右サイドに展開。内田篤人のクロスから本田圭のヘディングシュートにつなげた。
左サイドの香川真司が積極的に中に入り遠藤と絡むことで、複数のパスをつかって相手を崩すことに成功していた。
テンポアップした攻撃が結実したのは36分の同点ゴール。「チャ・ドゥリは食いついてくる」とのスカウティング通り、長友がチャ・ドゥリの裏を取って本田圭のパスを受け取り、そのタイミングに合わせて中に入ってきた前田遼一が決めた。
韓国の空いたスペースを有効に使った攻撃を繰り返し、このままの調子なら日本が追加点を挙げるのは時間の問題と思われた。