ブラジルW杯通信BACK NUMBER
日本、コートジボワールに逆転負け。
ドログバ投入後、崩された左サイド。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byTakuya Sugiyama
posted2014/06/15 15:30
キャプテンの長谷部は「自分たちを表現できなかった」と悔しそうに試合後にコメント。コートジボワールのサブリ・ラムシ監督は「ドログバがピッチに出て、すべてが変わった」と語っている。
4年前のW杯を彷彿とさせる、本田の先制点。
嫌な流れが瞬間的に消えたのは、前半12分、スタジアムに大雨が降り始めた時だった。前半15分、日本はこの試合で初めて左サイドバックの長友佑都がオーバーラップ。香川とのパス交換から左CKを得た。
本田のCKをニアの岡崎慎司が頭でそらしたボールは香川の前に転がりそうだったが、寸前で相手が処理。ビッグチャンスはその直後にやってきた。
スローインから香川のパスを受けた長友がドリブルで中央に切れ込み、ペナルティエリア内に駆け上がった本田へパス。本田はパーフェクトな右足トラップで相手DFのマークを緩ませ、左足を振り抜いた。
豪快なシュート。日本に先制点をもたらした本田は左手人差し指で何度も自分を指しながら、一目散にベンチへ向かった。
デジャビュだった。2010年6月14日、南アフリカW杯グループリーグ初戦のカメルーン戦。前半39分に先制点を挙げた本田は、ゴールを決めると控え選手が立ち上がって待つベンチへと走った。
4年後の夜も同じ。本田はベンチの輪に飛び込み、歓喜を分かち合った。本田は前回大会の第3戦デンマーク戦でも直接FKからゴールを決めており、これでW杯通算3得点。日本人歴代トップに立った。
1点リードも、半信半疑のまま時間が過ぎ……。
しかし、良い時間帯は長く続かなかった。その後、20分にも内田篤人の惜しいシュートがあったものの、どうにもリズムをつかめない。
1点リードしながらも半信半疑のまま時間が進んでいた中、悪夢の時が訪れる。後半17分、1点を追うコートジボワールが、MFセレイに替えてFWドログバをピッチに送り込んだ時だ。わき起こる歓声。明らかに、スタジアム全体の空気が変わった。
日本が立て続けに失点したのはドログバが入った直後だった。19分、ボニーのゴールで同点とされると、21分にはジェルビーニョに決められ、わずか3分間で逆転されてしまった。
ショックだったのは2失点とも同じ形だったことだ。相手の右サイドからオーリエにクロスを上げられてヘディングでの失点。あの時、いったい何が起きていたのか――吉田麻也が振り返る。
「ドログバが入って2トップ気味になり、クロスに対して中の枚数が単純に増えた。そこでのマークのズレが出てしまった。ドログバが入ってきたことでシンプルに蹴ってくることが増えたというのもある」