Jをめぐる冒険BACK NUMBER
今季10戦6得点のDF、広島・塩谷司。
5月12日、その名前はリストにあるか。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byYusuke Nakanishi/AFLO
posted2014/04/15 10:30
槙野智章、高萩洋次郎ら代表経験者に囲まれて、リラックスした表情を見せる塩谷司(右から2人目)。昨年ブレイクし、今年はすでに6得点とキャリア最高の得点数を記録。DFながら、その一発も魅力だ。
4月7日から9日まで行なわれた日本代表候補キャンプ。7人の初選出を含む代表経験の浅い選手ばかりを集めた「最終オーディション」で、南野拓実や川又堅碁といったアタッカーの注目株と並んで多くの記者に囲まれていたのが、サンフレッチェ広島のDF、25歳の塩谷司だった。
ピッチとスタンドの間に設けられた取材エリアでは、この金髪の若者の周りに二重、三重の人垣ができていた。
こうした状況に慣れていないのか、言葉数は決して多くない。答えよりも質問のほうが長いときもあったが、「自分の良さは出せたと思う」「うまく攻撃参加できたんじゃないかと思います」「どっち(CBとSB)もできることをアピールできた」といった言葉からは、たしかな手応えを掴んでいることがうかがえた。
大学、J2、そして優勝争いをする広島へ。
塩谷がこうも注目を集めるのは、DFながら今季すでに6ゴールの非凡な得点力と、シンデレラストーリーと言われる稀有な歩みのためだろう。
国士舘大学時代、中盤の控え選手だった塩谷がDFとしてプレーするようになったのは2010年、大学4年のときだ。コーチに就任した元日本代表キャプテン、柱谷哲二によってコンバートされ、センターバックとしてレギュラーの座をようやく掴んだ。
もともと技術と身体能力に光るものがあったが、サッカーと向き合う姿勢に問題があった。その点を柱谷から厳しく指導され、メンタル面や生活態度の改善に取り組んだ塩谷は、夏にはプロを意識するまでに成長する。
卒業後は、J2の水戸ホーリーホックの監督に就任した柱谷に誘われてプロ入り。ルーキーイヤーから活躍すると、「J2屈指のCB」という高い評価を得た。そんな若手をJ1クラブが放っておくはずがない。2年目の夏にはJ1の3クラブからオファーが届き、そのなかから塩谷が選んだのが、当時初優勝に向けて邁進していた広島だった。
その年チームは優勝したが、塩谷の出場は3試合にとどまった。だが翌'13年、浦和レッズに移籍した森脇良太に代わる右ストッパーに指名されると、全試合に出場しリーグ2連覇に大きく貢献したのだ。