Jをめぐる冒険BACK NUMBER
今季10戦6得点のDF、広島・塩谷司。
5月12日、その名前はリストにあるか。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byYusuke Nakanishi/AFLO
posted2014/04/15 10:30
槙野智章、高萩洋次郎ら代表経験者に囲まれて、リラックスした表情を見せる塩谷司(右から2人目)。昨年ブレイクし、今年はすでに6得点とキャリア最高の得点数を記録。DFながら、その一発も魅力だ。
直接FK2点、ヘッドが1点、流れの中から3点。
右のストッパーでありながら、今季は公式戦10試合で6ゴールをマークしている(日本代表候補キャンプ時)。その内訳を見てみると、直接フリーキックを叩き込んだのが2度、コーナーキックに頭で合わせたのが1度、流れの中からゴール前に侵入して決めたのが3度ある。
流れの中から決めた3ゴールには、共通点がある。いずれも味方にボールを預けたあと、敵の目を盗むように中央を駆け上がり、リターンやクロスをゴールに結びつけているのだ。昨年末には「攻撃のクオリティはまだまだ低いんで」と苦笑していたが、攻め上がるタイミングとコース取りを自分のものにしたようだ。
なかでも圧巻だったのが4月6日、名古屋グランパス戦で決めた今季6点目。ペナルティエリア付近で右からのグラウンダーのクロスをトラップすると、左斜め後方からの相手のタックルをキックフェイントでかわし、左足で決めた。なんという冷静さ! その一連の流れは実にスムーズで、とてもDFとは思えなかった。
最大の武器は、“強い”ディフェンス。
「攻撃的なDF」という場合、実は守備に粗さが目立つ選手が多いが、実は塩谷の最大の武器は、ディフェンスにおける“強さ”だ。
相手FWの前でチャレンジできる強さ、そこで奪い取れてしまう強さ。足腰が安定しているからバランスを崩されることが少なく、スピードとアジリティにも優れているから振り切られる場面もめったにない。
攻守両面でのクオリティが高く、完成された選手にも見える。だが、それでいて「未完成」という印象を抱かせるのも、塩谷の魅力のひとつだろう。つまり、まだまだ力を秘めていて、日本代表というカテゴリーで国際試合を経験すれば、さらにスケールアップしそう、そんな雰囲気を漂わせているのだ。
キャンプの最終日に行なわれた流通経済大との練習試合。さすがにフィニッシュまで持ち込む機会はなかったが、横から来たパスをダイレクトで縦に入れ、“攻撃のスイッチ”を入れる場面が何度もあった。
普段は3バックの右ストッパーを務めているが、4バックの代表ではサイドバックに入り、最後はセンターバックでもプレーした。3日間という短い期間の中でオーバーラップのタイミングを学び、2つのポジションをこなせることを示した。