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「最下位予想」を撤回させる魅力。
新生・西武に見た“上位の法則”。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNaoya Sanuki
posted2014/04/11 16:30
昨シーズンは110打点をあげ、プロ野球最年少タイ(当時23歳)パ打点王に輝いた浅村栄斗。今季は既に2本塁打を放ち(4月8日現在)、中村剛也に代わる4番として西武打線を支える。
昨年、112打数で初球打ちを記録した浅村。
いつもながら感心させられるのは浅村の好球必打の姿勢である。この打席、2球目こそ高めのカットボールを見逃してボールカウントを1-1にしているが、これは高めぎりぎりのコースで打ってもポップフライになるのが精いっぱいの球である。これを見逃して、さらにボール球を1つ見逃して2ボール1ストライクの局面からやや甘めに入ってきたストレート系の変化球を狙い打って右方向へもっていった。
昨年のボールカウント別成績を見ると、初球打ちは何と112打数もある。3ケタの初球打ちなど日本人選手はおろか、早打ちに定評のある外国人選手にも1人しかいない。2番目に多いマートン(阪神)の108とは接近しているが、3番目に多い長野久義(巨人)の85打数とくらべると浅村の初球打ちの多さが実感できる(参考文献『プロ野球スカウティングレポート2014』廣済堂出版)。
さらに注目したのは2-2で迎えた7回裏の攻撃だ。先頭の金子侑司がレフト前にヒットを打って出塁。昨年まで指揮を執っていた渡辺久信監督ならこの場面は100パーセント、バントのサインが出るが、金子は二盗で進塁する。無死二塁の局面でも渡辺前監督ならバントのサインが出ていたかもしれないが、伊原采配はヒッティングのサイン。鬼崎がこれに応えて右前にタイムリーを放つ。
アグレッシブな伊原采配に、順位予想を再考。
ちなみに、このタイムリーを打った球はボールカウント2-2からの内角低め142kmのストレート。難しいコースで見逃せばボールだったかもしれないが、鬼崎はヒットエンドランのサインが出ていたのか窮屈なスイングで打っていきライト前に運んだ。アグレッシブな伊原采配を象徴する場面で、これを見て最下位予想を撤回しようと思った。
新戦力・木村の守備力も新生・西武を象徴する。6回表、1点返されてなおも1死一、三塁の場面で3番内川聖一はライトへフライを打ち上げる。やや浅めの打球でも三塁走者が俊足の本多雄一なので楽に生還できる打球である。
木村の返球はワンバウンドのストライクボール。走者と交錯した炭谷がこれを落球して同点に追いつかれるが、投手時代、150kmを超えるストレートを投げ込んでいた木村の投げる能力の高さを遺憾なく発揮したシーンで、本多はさぞ肝を冷やしたことだろう。7回には中村晃のライト線への浅いフライをスライディングキャッチして、打球に追いつく速さでも一級品であることをアピールした。