MLB東奔西走BACK NUMBER
田中将大がメジャー公式戦初勝利!
不敗神話支える驚異の“スプリット”。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2014/04/05 17:30
田中の初勝利に大きく貢献したイチローは「今日は通常の精神状態を邪魔するものが一番多い日なのに……7回を100球以内に終わらせるのは、凄いね」とコメント。田中は試合後も「まだ1試合終わっただけ。いいピッチングを続けていきたい」と厳しい発言。
関係者全員を唸らせた、投球リズムの修正力。
敵地のホーム開幕戦で、ほぼブルージェイズ・ファンによって埋め尽くされた観客席。ちょっとしたことで、大ブーイングが巻き起こる独特の雰囲気の中、自分の投球リズムを回復させることは、経験を積んだ投手でさえ決して簡単なことではない。
田中は、オープン戦ではキャンプ地の小さな球場でしか投げていない。いきなりこれだけの大舞台で途中から投球を立て直してみせたという事実は、田中の評価をさらに上げることになったのではないだろうか。
試合後、チームや周囲の関係者は皆、口を揃えて田中への賞賛を惜しまなかった。
「スプリング・トレーニングで自分の投球をしていたが、適地での開幕戦、満員のブルージェイズ・ファンの盛り上がり、このような状況の下でも同じような投球をした。早い時期に自分のミスを修正できるということは、自分としては成熟した投手の明かしに他ならないと思う」(ヤンキース、ジョー・ジラルディ監督)
「彼は間違いなく本物だ。今夜の彼はタフだった」(ブルージェイズ、ジョン・ギボンス監督)
「いきなり最初のスプリットをホームランされながらも、彼は自信を失わずすべての球種を投げ続けた。彼にとって最高の夜になった」(ラリー・ロスチャイルド投手コーチ)
「最初に対戦した打者に本塁打を打たれたのに、まったく動じることがなかった。素晴らしい兆候だ」(マーク・テシェイラ選手)
アメリカの主要メディアは、田中を絶賛。
また、各主要メディアのサイトが、試合後の速報記事に使用した見出しには、どれも田中の立ち直りを賞賛しているのが見て取れる。
“Resilient Tanaka wins big league debut (立ち直った田中がメジャーデビュー戦に勝利)” 『MLB 公式サイト』
“Tanaka overcomes rocky start, wins debut (田中が不安定な立ち上がりを克服し、デビュー戦で勝利)” 『ESPN』
“Rocked on Start, Tanaka Finds Rhythm and Lifts Yankees to Win (立ち上がりに乱れたものの田中がリズムを見つけヤンキースに勝利をもたらした)” 『ニューヨークタイムズ』
“Tanaka settles down after early HR, Yankees top Toronto, 7-3 (田中が序盤の本塁打後に安定、ヤンキースが7-3でトロントを破る)” 『ニューヨークポスト』
“TANAK’D DOWN, BUT NOT OUT : Masahiro K’s 8 after rocky start to win in MLB debut (田中はダウンしたものの降板せず:将大が不安定な立ち上がりから8三振、デビュー戦勝利でスタート *造語見出しなので意訳による)” 『デイリー・ニューズ』
各主要メディアのサイトが、試合後の速報記事に使用した見出しだ。どれも田中の立ち直りを賞賛しているのが見て取れる。
今回のメジャー初登板で、改めてメディア、ファンが田中の実力を確信すると共に、彼への信頼感をさらに深めることになったはずだ。
多くの称賛コメントは、今日を境にメディアやファンたちが、破格の高額契約に見合う選手なのかどうかという田中への疑念を捨てたことを意味する。CC・サバシア投手、黒田博樹投手と同等、先発の柱のひとりとして田中を認めたということなのだ。もちろん、それも田中にとっては大きなプレッシャーになっていくことだろう。