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田中将大がメジャー公式戦初勝利!
不敗神話支える驚異の“スプリット”。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2014/04/05 17:30
田中の初勝利に大きく貢献したイチローは「今日は通常の精神状態を邪魔するものが一番多い日なのに……7回を100球以内に終わらせるのは、凄いね」とコメント。田中は試合後も「まだ1試合終わっただけ。いいピッチングを続けていきたい」と厳しい発言。
ヤンキースの田中将大投手が、メジャー初登板を終えた。
現地時間の4月4日、トロント・ブルージェイズを相手に7回を投げ、6安打3失点(2自責点)、8奪三振無四球。この日も先発で2得点したイチロー選手ら打撃陣の援護もあり、記念すべき初白星を7-3で勝ち取った。
決して完璧な投球内容ではなかった。
先頭打者のメルキー・カブレラ選手に高めに入った変化球を本塁打にされている。
そして、2、3回と苦しい投球を強いられた場面では、明らかに田中本来の制球力ではなかった。ブライアン・マキャン捕手が何度となく田中の元に歩み寄り声をかけていたところからも、それは明らかだった。
しかし、それでも崩れないのが、日本で“不敗神話”を築き上げた田中たる所以なのだろう。
田中のスプリットの絶大なる効果が証明された。
4回を三者凡退に抑えると、それ以降はメジャーでも屈指の強豪打線といわれているブルージェイズ打線を完全に手玉に取っていた。結局、4回以降に許した安打は6回に打たれた内野安打1本のみ。しかも、ほとんど三塁失策に近いもので、芯で捕らえられた当たりではなかった。
ただ、安定感を欠いていた序盤から、決め球のスプリットだけは如実に効果を発揮していた。
奪った三振のほとんどは、スプリットによる空振りだった。キャンプから相手選手に評価を受けていたこの球種。この日、改めてメジャーの名だたる強打者でも、初対戦ではこのスプリットに手を焼くことが証明された。
さらに97球で7回を投げきったというのも、メジャーのエース級投手として十分に及第点を与えられる出来だった。
特に尻上がりに調子を上げ、最後は安定感抜群の投球で締めくくったあたり、どう見てもメジャー公式戦で初登板した、新人投手のマウンド捌きではなかった。