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初のACL、久々の国際試合、完敗。
中村俊輔はなぜ楽しそうだったのか。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byGetty Images
posted2014/02/27 12:00
執拗なマークを受けながらも前を向いてプレーし続けた中村。前半はなんとかしのいだが、後半のわずか10分間で3点という、続けざまの失点で完敗した。
思い出される、セルティック時代の中村の言葉。
欧州CLも経験した男にとって、ACLの舞台はどこか物足りなさがあるのではないかと思っていた。注目度も決して高くなく、報酬も低い。日本の多くのクラブの経営規模を考えると、アジアと国内リーグの両立は困難だ。その戦いの厳しさをわかっているからこそ、ACLはリスクの大きな大会という認識もあるに違いない。だからこそ、その舞台に初めて立つ中村を見てみたかった。
血が騒ぐ。
35歳で挑んだ舞台は、いろいろなものを中村の内で呼び起こしたに違いない。以前乗り越えようと苦心したアジアの壁が、再び自身の前に立ちはだかる。その現実が新たな刺激を生んだのだろう。
「目の前に壁があると、これを乗り越えたらまた成長できる、と嬉しくなる」
8年前、セルティックに所属していた中村の言葉を思い出す。
ACL初戦での惨敗を、殻を破るきっかけにしたいと強く願うのだろう。チームとして、そして個人として。キャプテンとしても。
横浜はこれから、3月2日にJリーグ開幕戦、3月12日には前回王者の広州恒大をホームへ迎える。
「ここからが面白いと思う」
常にあらゆることを俯瞰し、客観視することで、成長してきた中村らしい表現は、自身を含め、仲間たちへの叱咤激励を含めたメッセージだ。
アウェーの地で体感したことから、何を修正し、何を補足し、そしてチームへどんな影響を与えられるのか? 過去と同じ方法ではその壁は越えられない。新たな挑戦が始まったことを実感したからこそ、中村は楽しそうな顔をして、スタジアムをあとにした。