JリーグPRESSBACK NUMBER
初のACL、久々の国際試合、完敗。
中村俊輔はなぜ楽しそうだったのか。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byGetty Images
posted2014/02/27 12:00
執拗なマークを受けながらも前を向いてプレーし続けた中村。前半はなんとかしのいだが、後半のわずか10分間で3点という、続けざまの失点で完敗した。
久々に挑む国際試合、モチベーションも高かった。
「前半、アウェーの戦い方をみんな出来ていたというのはわかった」
試合後の中村が口にした前向きなコメントはこれくらいだった。1点目を決められた直後、膝を叩き、悔しがっていた彼の姿からも「なんとかしのいでいたのに」という想いが伝わってきた。
キックオフ前のコイントスのあと、レフリーと相手キャプテンと共にフォトセッションに応じる中村からは、溌剌としたエネルギーが感じられた。
ADVERTISEMENT
「先頭でピッチへ入るのと、最後に入るのとでは、モチベーションも違う」
昨シーズン、中村はそんなことを話していた。アジアとはいえ、キャプテンとして国際試合へ挑む。そのモチベーションはきっとJリーグとも違うものがあったはずだ。
「久々に“韓国サッカー”という感じで、個人的には面白かったけど。そりゃ、負ければ面白いわけじゃないけど」
ミックスゾーンで、最初にそう話した以降は、チームの課題について淡々と10分近く話した。
「去年から上積みをしなくちゃいけないのに、まだその段階に行けていない感じがする。人は変われるんだから、去年と同じことをやろうとしていたらダメ。それには、もっと腹をくくらないといけない。今日がいい教訓になればいいし、しなくちゃいけない。向こうの前へ行く推進力だとか、勉強になったはずだから」
思わず「楽しそうですね?」と重ねて訊いた。
チームとしては「迷わないことが大事だ」と言いながらも、選手個々が「ひと皮もふた皮もむけなくちゃいけない」と危機感を語った。それは自分に対する警告でもあるように感じる。
久しぶりの国際試合。サッカーはチームの出来やクオリティが左右する競技ではあるが、空白の時を越えて、中村は自身のパフォーマンスに手応えを感じたのだろうか?
「半々かな」
しばらく考えたあと、わずかに笑みを浮かべながら、何度か繰り返した。そして、「うーーん。まだわからないかなぁ」と応える中村を目にして、思わず「楽しそうですね?」と重ねて訊いた。
「うん。久々にプレッシャーも激しかったからねぇ」
その笑顔からは、敗戦というネガティブな現実を除けば、純粋に“楽しい”と感じられる時間だったことがわかる。