JリーグPRESSBACK NUMBER
一匹狼がベテランとして再びJへ。
松井大輔が語るジュビロとの“縁”。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byNoriko Terano
posted2014/01/19 08:20
やわらかい表情で入団会見にのぞんだ松井大輔。32歳、ベテランとはいえその技術は全くさびついていない。
「僕もジュビロもスタートを切れるタイミングだった」
「グダニスクの監督とすごく仲が良くて、来年の補強を2人で考えたりしていたので、それは申し訳ないというか、心残りではあるんですけどね。加藤さんが11月の終わりくらいにポーランドまで来て、オファーをしてくれた。なんでJ2なんだという風にも言われるけれど、好きなチームで、駒野のような戦友がいて、知っている選手がいて、加藤さんから、誘ってもらえたのも何かの縁だと思う。必要とされているところで頑張りたい。
僕も30歳になってから怪我が多かったりして、ポーランドでは日本人トレーナーと一緒にイチから身体をリフレッシュした。精神的にもポーランドでの半年間で大人になれた部分があった。チームのためにプレーするということを考えるようになれた。ジュビロはJ2へ落ちて、イチからのスタートを切る。僕もジュビロもスタートを切れるタイミングだったというのもあります。
海外で長くプレーしていた選手がJリーグに復帰すると、最初は苦労する部分もある。J2は試合が多いので、そういう中で、自分のプレーも日本仕様にしていければいいなと思います」
「昔の話はもういい。ここから積んでいくしかない」
幸い移籍が囁かれていた前田遼一や駒野友一、山田大記など、主力選手が複数年契約だったこともあり慰留に成功。戦力補強も済ませた。そのうえでの船出となったわけだが、会見場をぎっしりと埋めたメディアから、拍手が起きる場面がほとんどなかった。その理由はわからないが、ファーストステージ優勝争いをした2004年以降、低迷する成績に対して、世間の目はそれだけ厳しいということだろう。
ジュビロほど“ジュビロらしさ”という言葉で表現されるチームはない。それほど強烈なインパクトを残したチームだった。しかし、そのキーワードは実はとても危険なものだ。そこには形やスタイル、スピリッツだけでなく、結果までもが含まれている場合もある。しかし、サッカーは進化するし、選手も入れ替わる。
「自分たちがプレーしていたチームが最高だと言ってもらえるのはうれしい。でも、今、実際に当時の試合を見てみたら、そこまで面白い試合をやっていないかもしれない。ただ、やっている選手も見ている人たちも楽しかったという思い出しかないから。
昔はあんなに楽しかったのにって。そこが理想だったっていう人がいっぱいいるんだと思う。それが今のジュビロを苦しめていたのかもしれない。亡霊じゃないけど、違う違うってみんなに言われて。だけど、昔の話はもういいと思うんだよね。あの当時のメンバーが指揮をとっても戻るわけはないから。ここから積んでいくしかないから。そんな都合よく戻せるわけじゃない」
現役引退時の取材でそう話した服部強化部長は、「昨シーズンは選手が楽しそうにサッカーをやっていないと感じた。そこを変えていきたい」と松井の明るさに期待を込めたと語ったのだ。