オリンピックへの道BACK NUMBER
村上と鈴木の抱擁、織田の激励……。
ライバルというより、チームとして。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2013/12/29 08:01
ジャンプの転倒で手から流血しながらも、全力で演じきった高橋大輔。ソチ五輪代表選考会では、満場一致での選出となった。
12月21日から23日にかけて行なわれた全日本選手権が終わり、24日にはソチ五輪の日本代表が決まった。おそらく大会のレポートは色々なところで目にする機会も多いだろう。少し角度を変えて振り返ってみたい。
大会の期間中、リンクの外でいくつか心に残る場面があった。
その一つは、女子ショートプログラムのあとのことだった。ミックスゾーンでの取材が終わり、引き上げようとする村上佳菜子と、これから取材を受けようとする鈴木明子がばったりと鉢合わせした。その途端、村上は涙顔で、鈴木は笑顔で、しばらくの間かたく抱き合っていた。
「なんで?」
そんな声が聞こえた。
戸惑いの理由はなんとなく想像できる。代表選考をめぐっての争いの中、ライバル同士なのに……というところだと思う。
また会場にいるときは気づかなかったが、織田信成が自身のフリーの得点を見届けた去り際「大ちゃん、がんば!」とリンク上の高橋大輔に声をかけたと聞いた。
バンクーバー五輪、選手村での男子3人の「会話」。
ふと、バンクーバー五輪期間中の、高橋、織田、小塚崇彦の選手村でのエピソードを思い出す。
「僕は比較的、パソコンとかIT系には強いので、2人にスカイプの設定をしてあげたんです。3人で部屋に集まって、ヘッドホンとマイクをパソコンにつないで会話したりしました。肉声でお互いの声が聞こえているからそんなものいらなかったんだけど(笑)」
以前、取材の中で小塚は言った。そして続けた。
「試合の場では競いあう相手だけど、試合を離れれば、ほんとうに仲がいいんです。競技で成績を争うわけだから、そんなことはないだろうと思われるかもしれないですけどね」
村上と鈴木の光景、織田の激励、そして小塚の披露したエピソード。それらは、同じ方向を示しているように思える。