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高橋大輔、“絶望”からのソチ五輪。
仲間たちの思いを胸に、エースは甦る。 

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田村明子

田村明子Akiko Tamura

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photograph byAsami Enomoto

posted2013/12/24 11:50

高橋大輔、“絶望”からのソチ五輪。仲間たちの思いを胸に、エースは甦る。<Number Web> photograph by Asami Enomoto

フリーの演技で右手から血を流した高橋。「人生でこんなに悔しい思いをしたことがなかった」と、代表発表の前の晩は寝られなかった。

「……高橋大輔」

 日本スケート連盟の伊東秀仁フィギュアスケート委員長が、そう口にした瞬間、会場は悲鳴にも似た歓声に包まれた。感極まって泣き崩れているファンたちも少なくない。

 12月23日、さいたまスーパーアリーナで行なわれた全日本選手権最終日。ソチ五輪代表選考の最終戦でもあったこの大会では、競技が終了してもソチ五輪代表の発表がなされるまで、会場の観客たちは席から動こうとしなかった。

 表彰台は羽生結弦が二度目の優勝を果たし、町田樹が2位、小塚崇彦が3位という顔ぶれだった。織田信成が4位、そして高橋大輔は5位。負傷で欠場した2008年を別にすると、高橋が全日本での表彰台を逃したのは実に2004年以来、9年ぶりのことである。

負傷を抱えたまま五輪選考に挑んだ高橋大輔。

 高橋大輔がジャンプの練習中に足を絡め転倒し、負傷をしたのが11月26日のこと。翌27日、右脛骨骨挫傷と診断され2週間の休養を言い渡された。ディフェンディングチャンピオンとして臨むはずだったGPファイナルを欠場。出場していれば、8回目となる予定だった。

「これまでGPファイナルに8回出場した選手はいなかったのではと思うので、出場したかったです。期待してくださった人たちに、申し訳ない気持ちです」と高橋はコメントした。

 12月5日あたりから徐々にジャンプを再開したものの、満足に練習はできず、右足の痛みが取れないまま全日本選手権を迎えていた。

 だがSPでは3アクセルを転倒して4位。

 フリーでは冒頭の4回転で転倒して右手を切り、流血しながらの悲壮な演技となった。

 ジャンプミスの重なった演技を終えると、涙をこらえながら悲しそうな笑みを見せた。

「もう五輪はないんだなと思いました」

 長い間日本男子を引っ張ってきたエースのあまりにも切ない姿に、ファンたちももらい泣きを抑えられなかった。

【次ページ】 ソチ五輪代表選抜の条件とは何だったのか?

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