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ミラン会長の愛娘が経営の実権掌握。
お家騒動勃発で本田への影響は!?
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2014/01/03 08:01
試合を観戦するベルルスコーニ会長の愛娘バルバラ(中央)。トレードマークだったブロンドの髪を赤毛のストレートにイメチェンした。
本田圭佑が入団するACミランは、日々変化の激しい欧州サッカー界にあって、名うての老舗クラブとして知られている。
1986年の買収以来、オーナーであるシルビオ・ベルルスコーニと現場を預かるガッリアーニCEOのコンビは、合計28個もの国内外タイトルを積み上げ、サッカー史に燦然と輝く黄金時代を築き上げた。
ただし、今の老舗は極度の不振に喘いでいる。年内最終戦だった17節ミラノ・ダービーを0-1で落とすと、2013年のリーグ戦を13位で終えた。
ミランが抱える未曾有の混乱はグラウンドの中だけでなく、クラブそのものが御家騒動の渦中にある。
火種は、ベルルスコーニの跡継ぎ娘バルバラだ。
バルバラから“実権をわたせ”という宣戦布告が。
11月3日、ホームで完敗したフィオレンティーナ戦後、バルバラはたまらず携帯を手にした。電話の相手は父親シルビオだ。
「パパ、もうこれ以上我慢できないわ。私に仕切らせてちょうだい」
彼女はイタリア最大の通信社ANSAを通じて、現経営陣を糾弾する緊急声明を出した。
業界でその名を知らぬ者はいない名番頭として27年来、老舗を切り盛りしてきたガッリアーニCEOへ“実権をわたせ”という事実上の宣戦布告だった。
憤慨したガッリアーニは「私にとっての“会長”は、生涯シルビオ・ベルルスコーニただ一人だ」と啖呵を切り、今季終了を待たずに辞任する意向を示した。
義兄弟さながらの盟友の怒りに驚いたベルルスコーニは、愛娘との仲裁に慌てふためいた。
5人兄弟の中で、次女バルバラが父親の野心家の血を最も濃く引いたらしい。2年前にフロント入りして以来、精力的にクラブ経営を学んできた彼女は、老舗の堕落に気がつき、不満を抱くようになった。
過去の栄光はあっても、大旦那である父親は政治の世界に熱中し、番頭のガッリアーニの頭の中にあるのは今やクラブ収支をトントンにする方策だけで、彼らはもはや勝利への飢餓感を失っている。