日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
「遠回りしたっていいと思ってる」
J2の1年は遠藤保仁の何を変えたか。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byYUTAKA/AFLO SPORT
posted2013/12/16 10:30
「J2 Most Exiciting Player」を受賞する遠藤保仁。プロ入り初の主将、宇佐美をサポートする高めのポジションなど、初体験に満ちた1年となった。
「僕は時に遠回りしたっていいと思っている」
ザックジャパンでも彼は変わらず「軸」であり続けている。
先のオランダ戦、ベルギー戦では後半開始からの出場となったが、日本の攻撃のペースを加速させる意味で存在感を発揮した。
サイドチェンジが本田圭佑の同点ゴールを呼び込んだオランダ戦では、攻撃のアイデアのみならず、相手にパスを出させないような守備のプレッシャーも効果的だった。続くベルギー戦でも、的を絞らせない攻撃に一役買う。ペナルティーエリア左手前でボールを受け取ってから中央で待つ本田にパスを送って勝ち越しの2点目をお膳立てしている。正確かつ迅速な判断力を世界のトップクラス相手にも示せたことは、このJ2での1年間を有意義に過ごしてきた証しでもあった。
遠藤はベストイレブンの代わりに、招待者の投票によって決まる「J2 Most Exciting Player」、つまりは“J2MVP”に輝いている。「新しいところ(J2)にいってプレーしたのは本当に楽しかった」と心からこの受賞を喜んだ。
彼は言っていた。「僕は時に遠回りしたっていいと思っている」と――。
遠藤保仁の視線は、既に2014年を捉えている。
J2の旅はひょっとすると遠回りだったのかもしれない。しかしそこで得た新しい発見、新しい経験が、遠藤にとって貴重な財産になったことは間違いない。
「来年はJ1に上がるし、ブラジルW杯というビッグイベントもある。J2から昇格して即優勝というチームもあるわけだし、そうなるようにしていきたい。クラブでも代表でもベストな結果を求めて最大限の努力をしていこうと思っています」
意外にも、彼はJリーグのMVPに輝いたことがない。“盟友”中村俊輔が栄光を手にしたことは、きっと刺激になったはずである。
「アジア(AFC年間最優秀選手)でもJ2でも(MVPを)取ることができたし、あとは……。コンプリートできたらいいですね(笑)」
遠回りしたつもりが、ときに近道になったりもする。今年の成果が、来年にどうカタチとして出てくるか――。
遠藤保仁の視線は、既に2014年にある。