喜怒哀楽が詰まった、奇跡みたいな半年間。

メキシコから2627マイル、本当に長い距離を歩いた。 

「シャシンカは来年のキックオフパーティに行かないのか」、「皆でトレイルマジックをしようぜ」、そんなことを仲間たちは口々に言う。

　トレイルエンジェルがどうして無償で僕達バックパッカーをサポートしてくれたのか、わかったような気がした。僕だって、できることなら来年トレイルで皆と会いたい。財産を引き継ぎ、そのバトンを渡していきたい。

　トレイルで“See You On The Trail”と言葉を交わしながら歩いた仲間たち。小さな一本道の前後に必ず同志がいる。それは奇跡みたいな半年間であった。トレイルには、喜怒哀楽が詰まっていた。

全ての友人にまた会えることを願って。

　PCTの道はカナダで終わってしまった。「レールに敷かれた人生が嫌だ」。そんな青臭いことを考え、ノコノコと日本からやってきた大馬鹿者は、とうとう敷かれたトレイルの上を全部歩いてしまった。

「千里の道も一歩から」。はじめの一歩はいつだったのか。不安顔でメキシコ国境を歩き始めたあの日だろうか。いや、きっとそのずっと前から、この旅は始まっていたに違いない。それは同時に、千里の道の終点はカナダではないということでもある。

　道はずっと続いていく。ここからは、自分自身で道を決め、切り拓かなければならない。どんな道になるのかはわからないが、それ故にとても楽しみでもある。

　すべての友人に「道の上」でまた会えることを願って、トレイルでいつも交わしていたこんな挨拶を贈りたい。

“see you on the trail”

　おっと、こんなキザな終わり方でいいのだろうか。まあ、いいだろう。きっとこれは「終わり」ではないのだから。

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