ロングトレイル奮踏記BACK NUMBER
「See You On The Trail」
4200km踏破で見えたもの。
text by
井手裕介Yusuke Ide
photograph byYusuke Ide
posted2013/12/13 10:30
4200kmを踏破し、PCTのゴール地点に辿りついた井手くん。
水平線に落ちる、『夢のカリフォルニア』の陽。
半年前、右も左もわからずにコンパスを頼りに向かった海で偶然出会ったJessica。僕はトレイル歩きのことを、照れながら彼女に話した。
「実は、今回が初めてのアメリカなんだ」
「それは、アメリカの一番良い部分を見ることができる素敵な旅になるわね」
当時は気付けなかったけれど、彼女の言葉は示唆に満ち溢れていたのだった。サンタモニカのビーチで、サーフィンから上がってきた僕を半年前と同じ笑顔で迎えてくれた。
「やっぱり自然が相手の遊びは難しいね。そうそう、君が前に話してくれた言葉の意味を噛みしめながら、波に飲み込まれていたよ」
「え、なんのこと?」
僕ははにかみながら、差し出されたタオルにくるまって暖をとった。『夢のカリフォルニア』の陽が、水平線に落ちようとしていた。
明日は帰国日だ。日本には台風が来ているらしい。甲子園で優勝出来なかった選手みたいに、西海岸の砂を持って帰ろうか。いや、やめておこう。僕は思い出にしがみついてしまう、弱い男だから。
『エンドレスサマー』という伝説のサーフィン映画はこんな風に幕を閉じる。
「時間とお金があれば永遠に夏を、波を追いかけていたい。だが、ひとまずここで終わりとしよう」
ひとまず、ここで終わりとしよう。
出会った仲間と記念撮影。とりあえず、ここで「終わり」にしよう。