スポーツのお値段BACK NUMBER
球団買収は、いくらならお買い得?
買い物上手はSB? 楽天? DeNA?
text by
並木裕太Yuta Namiki
photograph byHideki Sugiyama
posted2013/10/25 10:30
球団創設9年目にして、初めてリーグ優勝を果たし宙を舞う楽天・三木谷浩史オーナー。買い物上手は、空を飛ぶのも上手だった。
知名度向上の恩恵は「大衆サービス」でこそ大きい。
ここで重要なのは、携帯電話、インターネットショッピングという業種が「大衆化されたサービス」であるという点です。国民の多くが日常的に利用するサービスだからこそ、球団保有による知名度向上の恩恵を最大限に受けられる。歴代のオーナー企業を考えてみても、“劇場”をつくり人の移動を促す「宝塚モデル」の鉄道会社を除けば、新聞やテレビ(読売、中日、TBS、フジサンケイ)、映画(松竹、東映)、スーパー(ダイエー)など、やはり大衆サービス企業が多いことが分かると思います。
こうした視点に立つと、プロ野球チームを買うことに大きなメリットを感じるのは日本市場への参入を図る外資企業という線もあるのではないでしょうか。商品やサービスが大衆的という条件に合致していれば、莫大な資本力を生かして球団を買い、一気に日本全国へ名前を売るという戦略は効果的です。野球協約により外資企業のオーナーシップは認められていませんが、例えば日本企業との合弁会社を立ち上げるなどすれば不可能とは言い切れません。
DeNAの買収効果は楽天やソフトバンクに比べると?
DeNAはどうでしょうか。球団買収からまだ2年の段階ですが、確かに企業名の認知は飛躍的に上がったと言えます。ただし、本当に宣伝したかった同社の主力事業である「モバゲー」はチーム名に冠することができませんでした。そもそもソーシャルゲームという業種は「大衆サービス」とは言い難いのも事実です。DeNAは「球場に足を運ぶような野球ファンは、モバゲーも気に入るはずだ」と考えてベイスターズを買収したのかもしれません。しかし、その効果は楽天やソフトバンクに比べると、あくまで限定的なものに留まってしまいます。
また、参入時のイメージも重要です。買収に名乗り出る企業は「ヒーロー」として登場するべきです。買い手が見つからない、このままでは球団の数が減ってしまう、というピンチの時に救世主として現れる。そういう意味では、ソフトバンクも楽天もうまくやったと思いますが、DeNAは審査の過程で「出会い系だ」などとその業務内容に対して厳しい目が向けられることになってしまいました。