プレミアリーグの時間BACK NUMBER
マンU過去24年で最悪のスタート。
モイーズは“借りてきた猫”になるな!
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2013/10/09 10:30
第7節アウェイでのサンダーランド戦では、スタメンで初起用した左サイドのヤヌセイの2得点で勝利した。
10月に入ったばかりのイングランドで、マンチェスター・ユナイテッドでの現場復帰を否定する、サー・アレックス・ファーガソンのコメントが一斉に報じられた。
「監督に戻るつもりなどない。ユナイテッドには信頼の置けるデイビッド・モイーズという指揮官がいる」という発言だった。
前監督の出方に注目が集まる事態の可能性は予想されていた。何しろ、勇退後も役員として残留したファーガソンは、単なる前監督ではなく、26年半もの長期政権を実現した偉人なのだ。マンUには、第一次黄金期を築いたマット・バスビーが、監督引退と役員就任の翌年に現場復帰した前例もある。とはいえ、今季開幕から僅か1カ月半というタイミングの早さは想定外だった。
マンUは、開幕6試合で2勝3敗1引分けと負け越し、リーグ12位で9月を終えた。第3節リバプール戦は、スコアの上では惜敗(0-1)。だが、マンチェスター・シティとの第5節は、内容を反映した惨敗(1-4)であり、翌週のウェストブロムウィッチ戦(1-2)も、ホームゲームでありながら、格下に勝負を挑まれて敗れるという情けない結果だった。
11年の監督歴をもってしても、マンUでは「うぶ」。
もちろん、後任監督の責任はある。端的に言えば、モイーズは思っていた以上に「うぶ」だった。
思えばクラブハウスの監督室で、昨季までの「ファーガソンの椅子」に腰を下ろして笑顔を見せた、就任直後の写真からして「若葉マーク」のイメージを醸し出してしまった。メディアには歓迎され、新監督の純朴な一面を窺わせる一枚ではあったが、国内紙のスポーツ第1面を飾った新監督の写真に、プレミアリーグ監督歴11年の重みはなかった。これまでのマンUではファーガソンによる良い意味での「恐怖政治」が奏功していた事実を考えれば、尚更マイナスだった。
続く今夏の補強失敗は、9月の本コラムでも触れた通り。移籍交渉の戦術を誤った、モイーズと新CEOによるマンUのタッグチームは、移籍市場におけるプレミア最大の敗者として、この夏を終えた。