リーガ・エスパニョーラ最前線BACK NUMBER
121億円? それとも134億円?
不透明なベイル移籍と不穏な余波。
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byMarcaMedia/AFLO
posted2013/09/17 10:30
昨季プレミアMVPの実力に疑問の余地はないが、リーガでの真価は未知数。チームに漂う不穏な空気を吹き飛ばすパフォーマンスを見せることができるか。
ベイルのユニフォームが500万枚売れればいいのか。
ただ、ペレスは世界有数の建設会社ACSの会長で、リーガに本格的なマーケティングとマーチャンダイジングを持ち込んだ張本人。世間の話題になることが売り上げの増加にどれほど影響するのかよくわかっている。今回のこともあらかじめ計算し、最終的に損はしないという答が出ているはず。ちなみにベイルの獲得を求め、決めたのは監督アンチェロッティではなくペレスである。
しかし、たとえそうであっても、サッカー界のお金の動きを研究するバルセロナ大学の経済学教授ガイ・デ・リエバナは否定的だ。
「1億ユーロの投資の回収は難しい。ベイルの名前が入ったユニフォームを500万枚売ればよいのかもしれないが、ベイルのユニフォームを買った人は、カシージャスのユニフォームを買わなくなる。現実に即さない、あまりにも高額な補強だ」
さらに、それだけのお金をどうやって捻出するのかという点も問題になりかけている。
ベイルの余波で放出されたエジルの穴。
マドリーは否定しているが、世界最大の会計事務所デロイトやガイ・デ・リエバナ教授が見積もったマドリーの負債はおよそ6億ユーロ。それを財政的に支えてきたカハ・マドリー銀行は、昨年190億ユーロ(当時のレートで1兆9000億円)の緊急援助を求め、国有化されたバンキア銀行のグループ会社。ということは、ベイル獲得の陰にもバンキア銀行の間接的なサポートがあるのではないか。公的資金がそんなことに使われるのは許されないと、欧州議会の議員が欧州委員会に調査を要請しようとしているのだ。
そしてもうひとつ。エジルの移籍も「1億ユーロ」の余波である。
過去3年間、クリスティアーノ・ロナウドとのコンビで33ゴールに絡んでいるエジルは、本来ならチームに絶対欠かせない選手。ところがマドリーは8月の最終週にアーセナルから届いたオファーを握りつぶすのではなくエジルに知らせ、適正な額だと伝え、それとなく移籍を促した。1億ユーロの穴埋めに、提示されたおよそ5000万ユーロ(4500万ユーロ+インセンティブ460万ユーロ)が欲しかったからだ。