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弾むように歩き、勝った奇跡の名馬。
トウカイテイオー、天に召される。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byTomohiko Hayashi
posted2013/09/07 08:01
最後のレースとなった1993年有馬記念では、8番人気ながら優勝。翌年10月の引退式当日、メインレースに勝ったのは、皐月賞で2着に退けたシャコーグレイドだった。
史上最強のメンバーが揃ったジャパンカップを完勝。
翌'92年春、鞍上に父の主戦騎手だった岡部幸雄を迎え、復帰戦の大阪杯を優勝。しかし、次走、武豊が乗るメジロマックイーンとの「天下分け目の決戦」と注目された天皇賞・春では伸びを欠いて5着に敗退。レース10日後にまたも骨折が判明し、休養に入る。
同年の天皇賞・秋で復帰するも、乱ペースに巻き込まれて7着に惨敗。
次走、この年初めて国際GIに認定されジャパンカップでは、単勝10.0倍の5番人気に評価を落とした。ところが、である。クエストフォーフェイムとドクターデヴィアスという2頭のイギリスダービー馬、ヨーロッパ最強牝馬のユーザーフレンドリー、アーリントンミリオンの覇者ディアドクターなど「史上最強」と言われるメンバーが揃ったこのレースを、テイオーは、直線で追い出しを待つ余裕すら見せて完勝したのだ。
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かくして3つ目のGIタイトルを獲得するも、次走の有馬記念で11着に惨敗。強さと脆さが同居した部分を露呈してしまう。
3度の骨折を乗り越え、有馬記念で奇跡の復活。
その後、骨折のためまたも長期休養を余儀なくされ、364日ぶりの実戦として、'93年の有馬記念に出走。この年のダービー馬ウイニングチケット、菊花賞馬ビワハヤヒデ、二冠牝馬ベガ、ジャパンカップを勝ったレガシーワールドといった強豪を相手に、直線、まさに他馬が止まって見えるほどの末脚を繰り出して優勝。「奇跡の復活劇」として語り継がれるようになる。364日ぶりというのはもちろん休養明けGI勝利の最長記録で、今後もおそらく破られることはないだろう。
その有馬記念を最後に現役を引退し、'95年から種牡馬生活に入る。産駒には、'02年のマイルチャンピオンシップを制したトウカイポイント、'03年の阪神ジュベナイルフィリーズを勝ったヤマニンシュクル、'05年に交流GIのかしわ記念を勝ったストロングブラッドなどがいる。今年は2頭との交配にとどまったが、ともに受胎しているという。
今のところ後継種牡馬がいないので、父系の血は途絶えてしまうだろうが、母系の血としては確実に残る。オルフェーヴルやゴールドシップの「母の父」として脚光を浴びるようになったメジロマックイーンのように、再度光が当たる可能性はあるわけだ。