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<ヤクルト新監督の野球哲学> 小川淳司 「燕を甦らせた男の眼力と深謀遠慮」 

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阿部珠樹

阿部珠樹Tamaki Abe

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photograph byDaisaku Nishimiya

posted2010/11/19 06:00

<ヤクルト新監督の野球哲学> 小川淳司 「燕を甦らせた男の眼力と深謀遠慮」<Number Web> photograph by Daisaku Nishimiya

野村克也の野球哲学に学んだ指導者としての心得。

 指導者になってからの小川には、ひとつの指針があった。現役生活の晩年、2シーズンだけ教えを受けた野村克也の野球哲学である。

「自分が指導するようになってから、野村さんのミーティングのことを思い出して、ずいぶん参考にしましたね。この世界は、人を教えるとき、自分の感覚と体験でものをいうことが多い。でも、野村さんのミーティングはそういう体験と感覚に頼った狭い野球の見方を取り除いて、広い視野で野球の見方を教えてくれた。だから自分も体験と感覚だけでものをいうのは止めようと」

 技術の指導は感覚を押し付けがちだが、選手からすれば、論理的に納得できるようなものでなければならない。だからまず自分が納得して、論理的に説明できるようになること。論理に経験が加われば、選手にもよく浸透する。ひとりよがりにならない。それが野村から学んだ指導者としての心得だった。

 もうひとつ、ユニフォームを脱いでスカウトをしていたときの教訓が、指導者としての小川を形作った。

「いいところに」に目を向けて、二軍暮らしの畠山和洋を抜擢。

畠山はクリーンアップに定着し、得点力アップに貢献した

「人の判断は、早くしすぎてはいけないということ。自分が見て、積極的にアプローチしなかった選手が、プロでこんな選手になるのかと驚いた経験が何回かありました。潜在能力が開花したんですね。プロに入るような選手は、隠れた能力も秘めている。だから、簡単に判断をくださない。プロの基準で見れば、アマの選手はどうしても悪いところ、足りないところが目につく。でもマイナス評価だけしていては選手は獲れなくなってしまう。できるだけいいところを見てあげる。スカウトをやってそういうことを学びましたね」

 体験と感覚を押し付けない。能力を簡単に判断せず、いいところに目を向ける。小川の指導方針は、監督代行に就任してからも遺憾なく発揮された。典型的なのが畠山和洋の起用だ。

 今年10年目の畠山は長打力に定評があったが、守備と脚には難があり、起用に注文のつく選手だった。高田繁前監督が機動力と守りを重く見たこともあり、畠山の出番は減っていた。今シーズンも小川が代行になるまでは二軍暮らしだった。その注文のつく選手を上に引き上げ、クリーンアップで起用した。

【次ページ】 「攻撃重視」を起用法で示し、選手の意識を変えていく。

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