スクイズ必至の状況であえて打たせる。

　2回戦の仙台育英（宮城）との試合でこんなシーンがあった。2－1の僅少差で迎えた8回裏、1死一、三塁という場面で、1番・高島翔太が打席に立つ。是が非でも追加点が欲しい場面だ。しかも小技を得意とする常総学院にとってはスクイズにおあつらえ向きのシチュエーションだったが、佐々木はあえて打たせた。高島はセンターフライに倒れたが、こう振り返った。

「あそこでスクイズやって監督が目立ってもしょうがないでしょう。これからの試合のことも考えて、あそこは打たせた」

　最終的に優勝候補の仙台育英を4－1で振り切ったあと、佐々木は'03年夏に全国制覇を遂げたチームと「同じチームに見えてきた」と話す。

「打ったら、将来子どもに自慢できるぞ」

　当時、佐々木は前監督の木内のもとでコーチを務めていた。木内は東北高校（宮城）との決勝戦前、相手エースのダルビッシュ有（レンジャーズ）攻略について選手にこう言ったという。

「こいつは間違いなくプロに行くんだから。打ったら、将来、テレビを見ながら子どもに自慢できるぞ」

　常総学院はその試合、ダルビッシュに12安打を浴びせ、4－2で快勝。夏初優勝を成し遂げた。

　規律だけでは勝てないが、自由だけでも勝てない。厳しい約束事の中でも個性を発揮できるチーム。ここからの戦いは、そういうチームが強い。