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<運命のドラフトを巡る証言>イチロー
――オリックスの指名に天才打者は戸惑った。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2010/10/25 10:30
監督・土井正三、1位・田口壮の後ろに、あどけない鈴木一朗の姿が(後列左から2番目)
「『センター前ならいつでも打てる』って豪語してた」
2年夏に3番打者として甲子園に出て、その頃から少しずつ注目されるようになったんかな。3年春も甲子園に出たんやけど、そのときは投手も兼ねていた。ピッチャーやっとった方がドラフトで指名される確率が高いからな。最後の夏は甲子園には出れんかったけど、決勝までいって7割近く打った(.643)。『センター前ならいつでも打てる』って豪語してた。その言葉通り、振りゃ、ヒット。三振なんか見たことない。見逃し三振をしたことはある。でもそのときも『審判の判定ミスだ』って最後まで認めなかった。決勝は東邦高校に負けたんやけど、試合後は、ケロッとしてた。やるだけのことはやったんやからと。県大会でしっかり成績を残して、あとはドラフトにかかればいい、って感じだったな」
イチロー
1973年10月22日、愛知県生まれ。'92年、愛工大名電高校からオリックス入団。史上初の210安打を放った'94年から'00年まで7年連続首位打者。マリナーズ移籍の'01年に首位打者、MVP。今季、10年連続200安打達成
Number764号「プロ野球ドラフト秘話。」では、「運命の日を巡る6人の証言 その時、球史が動いた」として、イチロー選手の他、松井秀喜、小池秀郎、福留孝介、松坂大輔、田中将大の各氏・選手の話題を呼んだドラフトを6人の当事者が証言しています。