野球善哉BACK NUMBER
西武・浅村、SB・千賀、楽天・藤田。
勝手に推薦! 球宴で見たい3人の男。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2013/07/01 12:20
ソフトバンク交流戦優勝の立役者とも言われる千賀滉大。150kmを超える速球と落差の大きいフォークで豪快に打者をしとめるピッチングに、王貞治球団会長も「夢を与える投手」と絶賛する。
打撃のみで球宴に出る選手がいるなら、守備でも……。
楽天の藤田一也二塁手は、守備枠でお勧めしたい選手だ。
藤田はとにかく守備範囲が広い。
普段は深めの守備位置をとるのだが、打球方向が分かっていたかのような反応の速さが彼の秀でているポイントである。
6月29日のオリックス戦では神業のようなプレーを見せた。
1回裏、1死一塁から、糸井嘉男が放った二遊間のゴロをダイビングキャッチ。そのままの勢いでグラブトスをして二塁へ送ったのである。予測していないとできないプレーだった。
漫画『ドカベン』(水島新司著)に登場する明訓の“秘打男”殿馬一人が同じようなプレーを見せていたが(“ウッドペッカー・トス”といったと思う)、まさに、藤田のプレーは漫画の世界のようだ。
近畿大時代、注目選手の一人だった藤田を取材したことがある。その際に「魅せるプレーを心掛けている」と学生らしからぬ言葉を口にしていたのを思いだした。今の藤田は守備で魅せることのできるプレイヤーに成長している。
「守備で一番大事なのは予測すること。プロだと毎試合出ていますから、相手打者がどういうタイプか分かりますし、傾向も見えてくる。前もってどういう打球が来るのか予測を立てる。そして、ボールが来たときにどういうプレーをするか、1球1球考えています」。
彼の打率は.243。オールスターへの選出は考えにくい。
だが、守備がどれだけ上手くなくても、打つだけの選手が選出されるなら、逆があってもいいのではないだろうか。
オールスターに守備固めで出場し、プロの技を魅せる。
守備に特に秀でた選手のプレーもファンは見たいはずだと思うが……。
オールスターの選出が難しいとしても、現時点で12球団屈指の守備力を誇る二塁手と言っても良いだろう。藤田は「まだまだ」と謙遜するが、目標もある。
「上手い選手はいっぱいいるんで、僕はまだまだです。ファインプレーはたまたま生まれるものやし、まずは捕れるボールをしっかりさばいてエラーをしないこと。自分は守備が売りの選手だと思っているので、野球人生の中でゴールデングラブ賞というタイトルは目標にしたい」
浅村はファン投票・選手間投票ともに3位。千賀、藤田はランク外である。
その魅力あるプレーとは裏腹に、彼らの人気は高いものではない。しかし、プレーそのものは観客をひきつけるものを持っている。
オールスターに、彼らが出場できないものか……。